福島の汚染水で韓国は国中が騒然としている。国際原子力機関(IAEA)の試験の結果を自分の立場に引き付けて解釈し、真実かどうかを判断するというところにまで至った。事故直後に、放射能の濃度が高い汚染水が放流されたにもかかわらず、2010年以前と2011年以降の韓国の海岸における放射能の数値に差はない-という韓国原子力安全技術院の報告がある。韓国海洋科学技術院の発表を根拠として見ると、福島の汚染水放流後、その海水が数年後に韓国の海域へ入ってくる時点でも放流当時の6億分の1程度の放射能が混じっている。放射線の影響の程度を表す単位はミリシーベルトだが、韓国近海の海水を飲料水として1兆年にわたって飲んでようやく、胸部X線を1回撮る際の放射線量に当たる0.2-0.5ミリシーベルト程度を受ける。放射線技師の1年間の許容放射線量は50ミリシーベルトなので、ほとんど影響はないと見て差し支えない。自然界には、われわれが避けようとしても避けられない空気や地面から出る放射線や、食べ物や空気を通して受ける放射線が存在しており、人間は年間2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けながら暮らしている。この内容は科学的事実だ。それにもかかわらず、なぜ韓国の多くの政治家や科学者らは、福島の汚染水に関連して不安を醸成するのだろうか?
不安とは「理由もなく漠然と現れる不快な情緒的状態」だ。不安は対象のない漠然とした状態だが、恐怖は、それを引き起こす特定の状況や事物が存在する。こうした側面から、韓国で現在現れている国民感情は不安というよりむしろ恐怖に近い。現在、不安を助長しているのは恐怖マーケティングだ。
恐怖を感じると、人間は二つの反応のうちの一つを示す。急性ストレス反応の一種で、その対象と戦うか、逃げるか、どちらかをやることになる。これがまさに、米国の生理学者ウォルター・キャノンが初めて言及した闘争・逃走反応(fight or flight)だ。この反応でストレスホルモンが分泌され、脈拍や血圧が上がり、呼吸も早くなる。すなわち、交感神経が極端に活性化した状態で、慢性疲労、うつ、免疫力低下、そして頭痛、息切れ、消化不良など、各種の身体症状が現れることもあり得る。こうした状態が続くと、体と心が大きな傷を負うこともあり得る。