5日現在で再生回数が1100万回を超えるほど人気になっているフランスのプロ・サッカーチーム、パリ・サンジェルマン(PSG)所属キリアン・エムバペ(24)のインタビュー動画が偽物であることが分かった。この動画はPSG移籍説が浮上している韓国のプロ・サッカー選手・李康仁(イ・ガンイン、22)のことを日本人記者がバカにするような質問をし、エムバペが反論するというものだ。「反日感情」と結びついて高い再生数を記録しているが、この動画はエムバペがほかの記者会見に出ている時の映像に音声を合成してねつ造したフェイク動画であることが分かった。
【写真】AIがつくったフェイク動画「李康仁をバカにした日本人記者に反論するエムバペ」
先月15日、動画共有サイト「ユーチューブ」のチャンネル登録者数約2万人を抱えるある海外トピック・チャンネルに「李康仁をバカにする日本人記者の質問に不快だというエムバペ」というタイトルの動画がアップロードされた。日本人記者とされる人物の質問の声が流れた後、エムバペが答え、下に字幕が付けられている動画だ。質問の内容は「李康仁という韓国人選手が(PSGに)来ると聞きました。あなたはこれが単なるマーケティングのための入団だと思いますか。ほかの日本人選手たちについてはどう思いますか」というものだった。
すると、エムバペは口元をゆがめたり首を横に振ったりしながらフランス語で答えた。動画の字幕には「(李康仁を)信頼している。才能を持っているから、ここに来ることができるのだ。質問の意図が何なのかは分からないが、ここに来るということは準備ができているということであり、チームのメンバーとして彼を信頼すべきだ」と書かれている。そして、「あなたの国(日本)の選手たちについては全く知らない」という字幕も出る。李康仁を認め、日本のサッカー選手たちを無視しているような内容だ。
この動画に韓国のネットユーザーたちは「今日からエムバペは我らが兄貴だ」「サイダー発言(スカッとする発言)」「こじきのような質問に珠玉のような返答」などのコメントを寄せている。しかし、この動画は人工知能(AI)でねつ造された動画だった。エムバペが2021年の「UEFA EURO 2020」の記者会見で答えている動画の前部に、日本人記者とされる音声を合成して入れたものだ。これには文章の音声を変化させる「テキスト音声合成技術(TTS=Text-To-Speech)」が使われている。その後のエムバペの返答部分は李康仁に関する内容ではなく、所属チームとの再契約の可否に関する返答だったが、いい加減な字幕が付けられているものだ。
AIを利用したフェイク動画は後を断たない。今年4月、あるユーチューブのチャンネルには「韓国をバカにする中国人留学生の真の教育」というタイトルの動画が掲載されて再生回数を稼いだ。その動画は米国の有名私立大学教授と中国人学生が「韓国人はあまりシャワーを浴びない」「中国人は道で用を足す」などと舌戦を繰り広げる内容だったが、これもAIを利用したフェイク動画だった。ソウル大学AI研究院のチャン・ビョンタク院長は「AI技術を悪用して違法な収益を上げたり、犯罪に利用したりする人々を処罰するシステムをしっかりと設けなければならない」と語った。
キム・スンヒョン記者