■厳重に秘匿された「墨江洞窟プロジェクト」
石博士の研究チームは2012年、雲南省南部の墨江という場所にある閉鎖された銅鉱山で、また別のコロナウイルスを発見したといいます。ここで9種類のウイルスを抽出することに成功したということです。研究チームはウイルス確保の事実そのものは公開しましたが、その前後に起きた重要な事実を一つ隠していました。
銅鉱山に入ってコウモリのふんなどを採取していた6人の男性作業員が、その後、高熱やせき、肺炎など新型コロナに似た症状を示し、病院で治療を受けたものの、そのうち3人が死亡した-という事実を公開しなかったのです。
米国務省の調査チームは、情報当局が確保した通信傍受資料やハッキング資料などを基に新型コロナの起源を調査し、これらの男性を治療した医療陣が書いた論文などを通して、作業員らの死亡の事実を確認したそうです。
この鉱山で見つかったウイルスのうちの一つが、世界で700万人以上の命を奪った新型コロナウイルスと遺伝子構造が非常に似ていたといいます。
■中国軍介入、バイオ兵器として開発
サンデー・タイムズは「武漢研究所は少なくとも2017年から、中国軍事医学科学院と共同で秘密裏にコロナウイルス研究を行ってきた」と記しました。
墨江の廃鉱で確保したウイルスを組み合わせるやり方で、ウイルスの人間に対する伝播(でんぱ)力と致命度をできる限り引き上げ、これを実験用マウスに注入し、確認する実験を行っていたのです。新たに作られたウイルスに合わせてワクチンを開発する作業も進めたといいます。
米国務省調査チームは、石博士の確保した米国の技術を基に中国軍が生化学戦用ウイルスを開発しようとした、と判断しているそうです。中国軍事医学科学院のある研究員が2015年に書いた本には「ウイルスを操作して人間に感染しやすいようにできる点で、SARSウイルスは生化学戦の新たな時代を開いた」という内容が載っているといいます。
同科学院所属の周育森博士が、新型コロナ問題の起きた直後の2020年2月にウイルスワクチンの特許を電撃出願したのも、事前に研究がなされていたから可能だったといいます。
■研究員3人の感染から始まった
新型コロナウイルスが流出した時期は2019年11月だそうです。武漢で新型コロナウイルスが本格的に広まる直前です。30-40代の研究員3人が感染して病院で治療を受け、ある研究員の家族が感染して亡くなったということです。生物安全等級(バイオセーフティー・レベル)2の衛生環境で危険な研究作業を行っていて起きた事件だといいます。
こうした調査結果にもかかわらず、米国政府内では、まだ最終結論を出せずにいるといいます。ニューヨーク・タイムズは「CIAは依然として、確実な物証(smoking gun)はないとする立場」だと報じました。中国当局が外部の調査を遮断し続けてきた上、決定的な物証になり得る資料も全て廃棄し、証拠の確保が容易ではないのです。それでも、米国政府が確保した機密資料が大挙公開されれば、中国の新型コロナ責任論は世界で再び強まるものとみられます。
崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長