■中国の防空部隊、研究に直接参加
中国軍もまた、F35の方をより脅威的と見なす理由として、この戦闘機に搭載された先端航空電子システムとマルチロール(multi role)能力を挙げました。F35は中国の防空網に引っ掛かることなく沿岸へ接近し、搭載したレーダーや各種センサーで主な攻撃目標を探知する情報収集能力を備えている、と分析したといいます。また、B2戦略爆撃機などを護衛しつつ侵入する役割も果たせるだろうと見込んだといいます。
F35は米領グアムや在日米軍基地などに配備されており、韓国空軍や日本の航空自衛隊も主力戦闘機として運用しています。数百機に上るF35が、台湾を担当する中国東部戦区の主なミサイル基地や指揮所を廃虚にしてしまったら、台湾侵攻作戦をきちんと遂行するのは難しいでしょう。
この研究を遂行した研究陣は、鮑俊臣氏率いる合肥国防科学技術大学の研究チームと、広東省の人民解放軍31649部隊だといいます。国防科学技術大学合肥キャンパスは、航空電子分野を主に研究・教育している場所です。31649部隊については、部隊の機能が公開されていませんが、レーダーなどについての複数の研究論文に部隊名が出ていることを考慮すると、防空網の運用部隊だと見られますね。この部隊は南シナ海に接している広東省汕尾という場所にいますが、ここは台湾からは西に500キロ離れた所です。
研究陣の構成から見ると、中国軍の防空部隊が実際の経験を通して蓄積した資料を、合肥の国防科学技術大学の研究陣が分析し、評価したものとみられます。
■「無人戦闘機の脅威も無視できず」
研究陣は、米国のステルス戦略爆撃機B2とB1Bも、沿岸から300キロ離れた距離では脅威的な存在だと分析しました。また、米軍が運用するMQ9無人機については大きな脅威ではないものの、XQ58AとRQ180ステルス無人機などは無視できない脅威と評価したといいます。
研究陣がこの論文を書いた理由は、台湾攻撃を準備中の中国軍に対応体制の強化を促そうという狙いからでしょう。先端レーダーの開発や電子戦能力の向上を通して米軍ステルス機の攻撃に備えよ、というわけです。
具体的な対応案としては、電子戦を通して米ステルス戦闘機の電子装備を無力化する「ソフトキル(soft kill)」、中国版パトリオットといわれるHQ9(紅旗9)対空ミサイルやJ20(殲20)ステルス戦闘機などを利用して直接撃墜する「ハードキル(hard kill)」などを提示しました。さまざまな機関や装備が複合領域でF35戦闘機を探知する案も示したといいます。
逆に類推すれば、中国軍のレーダー探知能力や防空網は米ステルス爆撃機や戦闘機の攻撃を防ぐにはまだ力不足という意味だとみられます。
崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長