イルカからネコまで千差万別…「動物諜報員」の世界

ロシアの「ベルーガ・スパイ」
突然の南下に見る「動物諜報員」の世界

 ロシアの諜報(ちょうほう)装備を付けたままノルウェー近海で発見され、「動物スパイ」として有名になったベルーガ(シロイルカ)が最近、すみかをスウェーデンに移したという。英国紙「ガーディアン」が5月29日(現地時間)に報じた。

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 このベルーガは2019年春、ノルウェー北部のフィンマルク付近の海域で漁民らによって発見された。首と胸に「サンクトペテルブルク備品」と表示された水中カメラ用のハーネス(ベルト)を付けていた。当時、ノルウェーの情報当局は「ロシア海軍のスパイ訓練を受けた可能性がある」としていた。ノルウェー当局は、ベルーガに「バルディミル(Hvaldimir)」という名前まで付けた。ノルウェー語で「クジラ」を意味する「バル(hval)」に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の名前の一部「ディミル(dimir)」をくっつけたのだ。かわいい見た目に加えて、スパイ訓練まで受けたという事実が判明したことで、バルディミルは世界的に広く名を知られるようになった。

 ノルウェーのクジラ保護団体「ワン・ホエール(OneWhale)」によると、バルディミルは少しずつ南方へとすみかを移していたが、今年に入って移動を突然早め、5月28日にはスウェーデン南西部の都市フンポストランド付近の海域で見つかった。バルディミルが南下を急ぐ理由は明らかになっていない。海洋生物学者のセバスチャン・ストランド氏は「パートナーを探そうとするホルモンが作用していることもあり得るし、寂しいからかもしれない」と分析した。専門家らは、ロシアで軍事上の目的でバルディミルを育成していた可能性が高い、とみている。発見当時、船の周りを捜索するようにぐるぐる回り、人間の食べ物を好んでもらっていたからだ。

 世界各国は長年、諜報活動のために動物を活用してきた。1914年の第1次世界大戦当時、ドイツ軍はカメラをつり下げたハトを偵察に用いた。冷戦中の1960年代には、米国とソ連が「戦闘イルカ部隊」を競ってつくり上げ、軍事作戦に利用し始めた。イルカは高度な水中音波探知能力を備え、電子音波探知機よりもうまく機雷などを見つけることができるからだ。イルカだけでなくアザラシも訓練を経て同様の任務を担当した。

 各国の「動物スパイ」活用は動物虐待論争も生んだ。60年代に米国中央情報局(CIA)が駐米ソ連大使館への諜報活動のため、ネコの腹部に盗聴装置、胸部にバッテリー、脊椎に沿ってアンテナを埋め込む「アコースティック(聴音)・キティ」作戦を試みていた-という事実が2001年にCIAの機密解除文書によって詳細に判明し、論争になった。1998年にある市民団体が、冷戦当時、旧ソ連海軍が、背中に爆弾を取り付けたイルカを自殺特攻隊として利用したと暴露したこともあった。

 動物虐待論争が続く中で、水中ドローンなど動物を代替し得る武器が開発され、「動物諜報部隊」は解体されていった。だが昨年4月、米国の民間衛星会社Maxar Technologiesの衛星写真を通して、ロシア軍がクリミア半島の港湾都市セバストポリ付近で戦闘イルカ部隊を復活させたことが確認され、物議を醸した。ロシアは2014年にクリミア半島を強制併合した後、ここで軍事用イルカの訓練を再開したという。米海軍研究所(USNI)は「ウクライナ海軍特殊部隊の水中潜入を防ぐためにイルカを訓練したものとみられる」とコメントした。

リュ・ジェミン記者

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