スパイ防止当局が確保した押収物には国家保安法違反容疑が持たれている民主労総関係者が作成した北朝鮮に対する忠誠誓約文も多数含まれているという。忠誠誓約文は北朝鮮の主体(チュチェ)思想と金正恩(キム・ジョンウン)氏による指導を称える内容だという。誓約は朝鮮労働党創建記念日(10月10日)、金正日(キム・ジョンイル)元総書記の誕生日(2月16日)など北朝鮮が重視する祝日を前後して作成されたという。
北朝鮮はまた、韓国のスパイ防止当局による捜査を念頭に置き、関連捜査を「公安弾圧」と位置づけ、大衆の怒りを誘発するように指示したという。政府関係者は「事実関係の把握ではなく、捜査自体を『公安弾圧』と決め付け、スパイ容疑事件という本質をぼかす世論戦の手法を使うよう指示した」と話した。北朝鮮は指令文で北朝鮮工作員と接触した人々や工作員が標的とした人物を「統一愛国勢力」と呼んだ。彼らに対する捜査は愛国勢力に対する弾圧だという論理だ。実際今回の事件の容疑者は「労組弾圧」などを前面に掲げ、不当な捜査だと主張しているという。
現在スパイ防止当局は、容疑者らが活動した地域を中心に「昌原スパイ団」「済州スパイ団」「民主労総現職・元幹部」という3つの事件に分けて捜査を進めている。中心人物に対する取り調べが終わり次第、国家保安法違反の罪で起訴する方針だ。政府筋は「今回は容疑者のiPhone(アイフォーン)やテレグラムに対しても異例の解読を行ったと聞いている」と話した。
キム・ミンソ記者