インドネシアは、南シナ海周辺の他の東南アジア諸国との協力も強化している。昨年9月、フィリピンと海洋安全保障強化のための防衛協力協定に署名した。両国はテロ対応や国境管理など安全保障分野はもちろん、エネルギー・海上開発・教育・保健などの分野で5カ年計画を立て、協力を強化することとした。マレーシアおよびブルネイとは、今年上半期中にナトゥナ諸島付近の海域で合同軍事訓練を行う。またインドネシア軍は、米国・日本・オーストラリア・インド間の多国籍安全保障協議体「クアッド(Quad)」との共同軍事訓練も推進している。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)紙は「フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾などはこれまで中国の九段線に強く反発してきた」と伝えた。
中国側は強く反発している。中国政府は、今回のインドネシア・ベトナムEEZ協定妥結について「南シナ海の海洋境界確定交渉は中国の正当な利益を損なってはならない」と表明した。中国南海研究院の呉士存院長はSCMP紙に「地域的反発が大きくなれば、中国は海軍や沿岸警備隊など海上抑止力を強化する可能性が高い」と語った。
だが中国も、安易にインドネシアを無視はできない状況だ。インドネシアの人口は2億7300万人に達する上、フィリピン(1億1400万人)、ベトナム(9700万人)、タイ(7200万人)と連帯する可能性もあるからだ。他方でインドネシアもまた、最大の貿易相手国である中国との関係は重要だ。
実際、中国は昨年末、沿岸警備隊所属の大型艦をナトゥナ諸島付近に送り込んだといわれている。シンガポール国防戦略研究所(IDSS)のコリン・コー(Collin Koh)リサーチフェローは「(回帰不能点の象徴である)ルビコン川は渡らずに不快感を表する、中国政府の威力の誇示」と指摘した。
イ・ヒョンテク記者