脅迫犯との通話は3時間43分後の午後9時37分ごろになって完全に終了した。金銭を借りるために電話をかけた際と通話状態が悪かった時など、約1分ずつ3回を除けば、ずっと脅迫犯と電話がつながっている状態で指示を受けたという。Aさんは「私は電話を切る時までそれがボイスフィッシングだとは気づかなかった。娘がカナダにいて、それもホームステイ中だという事実まで知っていたので、本当に大変なことになったと思った」と話した。電話を切るとすぐ、Aさんは江南署に駆けつけた。午後10時ごろ、娘と直接電話で話し、4時間にわたって経験したことが全てボイスフィッシング詐欺だったことを知った。
最近同様の手口で詐欺に遭ったケースがほかにもあった。ソウルのある留学あっせん業者は12日、「海外出国者の家族にボイスフィッシング電話が来るという情報提供があった」との警告メールを送ったという。留学関連のオンライン掲示板でもそうした手口を経験したという書き込みがある。ソウル地方警察庁関係者は「留学生の具体的な個人情報まで知っているという点からみて留学関連業者などがハッキングされた可能性もある」と話した。
捜査機関は取り締まりを強化しているが、ボイスフィッシング犯罪はますます巧妙化している。警察庁によると、昨年1年間でボイスフィッシング犯罪が2万479件発生し、5147億ウォンに上る被害が生じた。昨年7月に発足したソウル東部地検のボイスフィッシング犯罪合同捜査団は、過去5カ月間にボイスフィッシング犯罪で111人を摘発した。2013年から9年にわたり、296人から約10億ウォンをだまし取ったボイスフィッシング組織の総責任者、ペーパーカンパニー16社を設立後、法人名義で犯罪に使われる口座を開設した元組織暴力団メンバーなどが含まれた。
専門家は家族や知人の番号でも海外から電話がかかってきて金銭を要求されたら、ボイスフィッシングを疑うべきだと指摘する。発信番号を変える装置もあるため、だまされやすいからだ。家族で合い言葉を決めておき、ボイスフィッシングの疑いがある電話を受けた際に本人確認する方法もある。順天郷大学警察行政学科の呉允盛(オ・ユンソン)教授は「やむを得ない事情があるように装い、一度電話を切ってみるのも一つの方法だ。理性的に状況を調べる余裕があれば、より適切に対処できる」と話した。
パク・ヘヨン記者、キム・フィウォン記者