【コラム】パキスタンのグワダル港で行き詰まる中国の巨大経済圏構想

一帯一路の模範事業としてアピールしてきたパキスタンのグワダル港
現地住民数千人が3カ月にわたり抗議デモ
中国漁船の違法操業などに触発され…「中国人は出ていけ」というスローガンまで

■「発展どころか、海と生計が失われただけ」

 地域の漁民や労働者などは2021年8月、この一帯の道路を占拠して大々的なデモを繰り広げました。現地の政治団体や民権運動家が主導し、女性や子どもまで加勢したことで規模が大きくなったといいます。最終的に、当時のイムラン・カーン首相が違法漁労の取り締まりなどを約束したことでなんとか鎮火したといいます。

 しかし、パキスタン政府がきちんと約束を履行しなかったことで、昨年11月から再びデモが燃え上がりました。グワダル権利運動という団体が中心になり、グワダル港の出入り口や、グワダル港と高速道路を結ぶ連結道路などで数百人から数千人が連鎖デモを繰り広げました。

 彼らは検問施設の縮小、イランとの非公式国境貿易の制限緩和、中国漁船の違法操業取り締まりなど40項目の抗議・要求事項を掲げ、要求事項が受け入れられなければCPEC建設を妨害するとも言ってます。「1週間以内に中国人はみんな出ていけ」という主張が出たこともありました。

 英国「ガーディアン」紙の現地取材内容を見ると、住民らの不満を察することができます。ある70代の漁民は「グワダル港を開発して経済回廊を建設すれば、地域も発展して仕事も増えると言ったが、結果は海と生計を失っただけというありさま」と語りました。

■「反中の道」となる一帯一路

 昨年末、パキスタン政府は5人以上が集まる集会やデモを禁止し、デモ隊およそ100人を逮捕しました。中国政府が現地中国人の安全や経済的利益の保護を要求し、圧力を加えたことから、強硬策を取ったのです。この過程で警察官1人とデモ隊1人が死亡し、取材中の記者が拘束される事件も起きたといいます。

 中国政府はこれまで、グワダル港開発を含むCPECプロジェクトを一帯一路の模範事業として大々的に宣伝してきました。両国にとって互いの役に立つウィンウィンのプロジェクトだというわけです。現地住民の今回のデモは、こうした宣伝がどれほど空虚な言葉であるかをよく示しています。

 この件を巡り、中国外交部(省に相当)は当惑の表情を浮かべています。外交部報道官は昨年11月、この事態についての質問が出ると「デモは中国や経済回廊プロジェクトに反対する活動ではない」と主張しました。パキスタン政府と現地住民の間の対立だという主張ですが、実情とは大きな差のある発言でした。習近平主席の力点事業なので、事実を知りながら、突拍子もないことを言っているのです。

 一帯一路はカザフスタン、キルギスタン、ミャンマーなど行く先々で現地住民の強い反対世論に直面しています。中国が主張する「共存共栄の21世紀のシルクロード」ではなく、中国に対する反対世論を世界に拡散する「反中の道」となりつつあります。

崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長

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