では、あの巨大な中国で韓国のエンターテインメントに対して文化的聖戦を主導し続け、参加しているのは一体どんな人々なのだろうか? 中国の文化研究者たちが書いた『アイドルになった国家 中国のインターネット文化とファンダム民族主義』(カルムリ社)という本には、興味深いことに「現代中国の『ファンダム民族主義』はKカルチャーと呼ばれる韓国のポップカルチャーを熱心に消費している女性層を中心に形成されている」と分析している。1980年代生まれの男性たちが主導していたサイバー民族主義が、1990年代生まれやそれ以降に生まれた人々、特にK-POPのファンダム(ファン・コミュニティー)活動を通じて、集団行動の新たな文法と戦術を学習した人々を中心とした「ファンダム民族主義」に徐々に置き換わりつつある、というのだ。そうして彼らのスローガンは「あなたのアイドルを愛するようにあなたの国を愛せよ」となった。
ファンダム民族主義を内に秘めたこれらの戦士たちは依然としてKカルチャーを消費している。だから、韓国のポップカルチャー業界で起こっている出来事や韓国のネット情報に精通し、韓国語を話せる人も多い。彼らは韓国のネット空間の広範囲な合意である反中感情にもすぐ接することになる。触れ合いや交流を通じ、知らなかった人々を知るようになると、アイデンティティーを超えた友愛が生まれることもあるが、反対に知れば知るほど互いをいっそう嫌うようになり、むしろ反感が高まる状況も発生する。今、韓国のポップカルチャーを媒介して急速につながりつつある韓国と中国のネットユーザーたちの間では、後者の心理機制の方が強そうだ。
「ナイキを履いてデモする反米闘士たち」。このイメージは「米国文化に夢中なのに、政治的には米国を嫌う人たち」をあざ笑う人々が引用する典型的な表現だ。韓国文化が大きくなればなるほど、韓国人は思いもしなかった人々にもっと接するようになるかもしれない。それはつまり「K-POPアイドルのファンだが韓国を嫌う人々」のことだ。だから、相次ぐ韓中ネット文化戦争のニュースは、2015年の台湾での出来事がいつでもどこでも繰り返される可能性があることを知らせる、不安なシグナルなのだ。
イム・ミョンムク(『Kを考える 90年代生まれは大韓民国をどう見ているのか』著者)