■「実験室」の外に出た自動運転車
ソウル市や京畿道だけでなく、地方にも自動運転のモデル地域は拡大している。国土交通部(日本の省庁に相当)は6月、従来7カ所だった全国の「自動運転車の試験運行地区」を計14カ所にまで大幅に増やした。当初はソウル市麻浦区上岩洞、世宗市、済州市などに限られていたが、ソウル市江南区、清渓川、京畿道始興市、江原道江陵市、原州市、全羅北道群山市、全羅南道順天市を追加することになった。これらの地域は、民間企業が自由に一般市民を対象に有償運送が許可された特例地区だ。
自動運転車業界では「道路上に自動運転車が増えているということは、技術水準と市民の受容性がそれだけ高まりを見せているという意味」と話す。グローバル・コンサルティング企業KPMGの報告書(2020年)によると、韓国の自動運転車導入準備指数は世界第7位だ。自動運転関連企業の企業数は多くないばかりか、累積運行距離も米国や中国に大きく後れを取っているものの、1年で6ランクアップするなど、世界で最も速い成長を成し遂げた。韓国国内のある自動運転企業の関係者は「韓国は5G(第5世代)の通信網が全国に敷かれている上、半導体と完成車でグローバル次元の企業が良い成績を収めており、自動運転車の拡大に有利な条件を兼ね備えている」とし「今は多くの経験、データを蓄積することが重要だ」と述べた。
■利用率は低い方、「直接乗ってみることで受容性アップ」
自動運転車は急速に増えているものの、市民の利用はまだそれほど多くないようだ。10月3日、ソウル市によると、2月10日から8月31日までに上岩地区で自動運転車をコールした件数は計1574件、搭乗客は2128人だった。1日平均で約10人という計算だ。人が運転するタクシーやバスに比べて運転が不慣れで速度も遅いため、今は「好奇心」による搭乗がほとんどだ。自動運転車は、従来の運輸業者が収益性を理由に運営されていない路線を走っているほか、障害者用の自動運転タクシーを導入するなど、市場の死角地帯を埋める役割を果たしている。
ソウル市のチェ・ジョンソン自動運転チーム長は「これまで自動運転車は実験室の中だけの存在だったが、今は技術開発段階を経て市民が実際に体験する『サービス』段階に突入している」とし「今は地方自治体のサービスを通じて運営しているが、今後は民間事業者が有料運行を通じてお金を稼げる事業性を備えていくことが課題」と説明する。自動運転スタートアップの「42dot」のキム・ジョンウ理事も「ソウル、板橋、済州のどこへ行っても自動運転車に乗れる時代になれば、行く行くは乗客とドライバーが、さらには社会全般の自動運転車に対する受容性が高まりを見せるだろう」と述べた。
パク・スンチャン記者