文在寅政権下の公共機関で行われた「形だけの正社員化」

公共機関の定員は35%増えたがその多くが子会社所属あるいは無期の契約社員

 文在寅(ムン・ジェイン)前政権が「正規雇用を増やす」として最初に掲げた政策は「公共部門非正規雇用ゼロ」だった。政府が影響力を行使しやすい公共機関から最初に非正規雇用をなくし、この流れを民間企業に広げる狙いだった。ところが実際は公共機関の規模が大きくなっただけで雇用の質に大きな改善は見られず、そのため「形だけの正社員化」との批判が相次いだ。

 非正規雇用ゼロ政策は文前大統領による「1号指示」だった。文前大統領は就任3日目の2017年5月12日に仁川国際空港を訪れ「公共部門の非正規雇用ゼロ時代を切り開く」と宣言した。その後は中央部処(省庁)や地方自治体、公共機関、公企業、教育機関など公共部門853カ所に所属する非正規雇用41万5600人のうち、正規雇用とほぼ変わらない常時型・持続型業務を担当する20万3000人を正規雇用に転換する計画を発表し、実際に19万8000人(97.4%)が昨年末までに正規雇用となった。正規雇用への転換を強く推し進めた結果、公共機関の定員も大幅に増え、2016年末に32万8000人だった定員は昨年末には44万3000人と35%の大幅増を記録した。

 しかし正規雇用への実質的な転換効果は低く、数字を増やすことだけに集中したとの指摘も相次いでいる。例えば空港のセキュリティーや保安検査などの場合、協力会社の社員を無理に正規雇用とするため子会社を立ち上げて採用するか、本社に採用する場合でも多くを無期契約雇用の形にした。これは単なる見せかけに過ぎなかったということだ。

 文在寅政権で正規雇用化を進める目的で設立された公企業の子会社は合計36社に達する。国会予算政策処によると、369ある公共機関(付設機関を含む)では無期契約雇用は正規雇用に分類されるが、賃金などの待遇は一般の正規雇用には及ばない。統計上では正規雇用が増えたが、雇用の質はさほど変わっていないのだ。そのため公企業への就職を目指す若者たちの絶望感は一層深まった。

 さらに大きな問題は、国全体として前政権発足後は逆に非正規雇用が増えた点だ。統計庁によると、賃金労働者全体に非正規雇用が占める割合は2012年(33.2%)以来減少傾向にあったが、文在寅政権が発足した2017年には32.9%と前年比で0.1ポイント増え、その後も上昇傾向が続いている。昨年は38.4%を記録した。

イ・ジュンウ記者

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  • ▲2017年5月12日に仁川国際空港で開催されたイベント「やって来る大統領、公共部門非正規雇用ゼロ時代を切り開きます!」で自らの考えを述べる文在寅(ムン・ジェイン)前大統領。文前大統領はこの場で「良い雇用」について語った。/NEWSIS

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