大統領選挙では、与・野党共に男女の対立を票集めの手段として利用した。「国民の力」の政治家たちは、女性家族部(日本の省庁に相当)を「男女対立を助長する省庁」と指摘し、廃止を主張。20-30代男性の支持を訴えた。大統領候補一本化のための「国民の力」党内選挙に出馬した柳承敏(ユ・スンミン)、ハ・テギョン候補は、女性家族部の廃止という公約を掲げ、男性たちが逆差別を受けていると主張した。尹錫悦候補は大統領選候補に選出された後、「女性家族部の廃止」という公約を掲げた。「これ以上、構造的な性差別はない」とも言及した。英ロイター通信は3月、尹錫悦大統領が当選した直後、女性家族部の廃止という公約に触れ、韓国のジェンダー戦争を選挙公約として利用するという決定」だったと評した。
一方、「民主党」は、女性を家父長制の被害者として挙げ、「国民の力」を男性の立場に立って分裂を引き起こす勢力と定義。攻勢を強めた。李在明大統領選候補は昨年9月、女性紙へのインタビューで「男女関係も一種の階級」とし、「労働と資本の関係」に例えた。かと思えば、李候補は「狂気のフェミニズムを止めてほしい」という書き込みを共有する一方で、フェミニズム性向のインターネット・メディア「ドット・フェイス」のインタビューに応じるとしたものの、一時保留とするなど、あいまいな立場を示し、批判を浴びた。米ワシントン・ポストは、韓国の大統領選挙について「韓国のフェミニストたちが性差別主義的なバックラッシュ(反動)に対抗し、戦っている」と述べた。
国会女性家族委員会のチャ・インスン元チーフ専門委員は「20-30代は性に対する平等意識が高まった世代だが、政界が彼らをミスリードしている」と批判した。英国のザ・タイムズ記者だったマイケル・ブリン元ソウル外信記者クラブ会長は「政治家たちは、ジェンダーに対する話題が『商売』になると考えているため、これを拡大再生産している」と書いた。ソウル大学のキム・ギョンボム教授は「政治は男女感情の争いを利用して互いに傷つけ合うのではなく、むしろ治癒されなければならない」とした上で「政治は、ジェンダー対立を解決すべき最優先課題として格上げし、論議していく役割を果たさなければならない」と促した。
〈特別取材チーム〉金潤徳(キム・ユンドク)週末ニュース部長、キム・ヨンジュ社会政策部次長、卞熙媛(ピョン・ヒウォン)産業部次長、キム・ギョンピル政治部記者、ユ・ジョンホン社会部記者、ユ・ジェイン社会部記者、ユン・サンジン社会部記者