文在寅政権は約束していないと言っているのに…中国「THAAD運用制限も宣誓」

外相会談翌日に中国政府が「三不一限を守れ」と主張

文在寅政権は約束していないと言っているのに…中国「THAAD運用制限も宣誓」

 中国外交部(省に相当、以下同じ)は10日、在韓米軍のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)問題について「韓国政府は対外的に『三不一限』政策を宣誓した」と主張した。前日の韓中外相会談でもTHAADをめぐる神経戦が繰り広げられた。

 三不とは文在寅(ムン・ジェイン)前政権初期の2017年10月に当時の康京和(カン・ギョンファ)韓国外交部長官が国会でTHAADについて説明する際に出た言葉で、「米国のMD(ミサイル防衛システム)に参加しない」「THAADを追加配備しない」「韓米日軍事同盟に参加しない」という意味だ。文在寅政権は「三不は約束や協議ではなく単なる立場の表明」と主張しているが、中国は「三不」を「文在寅政権による公式の約束」とみなし、これまでその実行を求めてきた。「一限」とはすでに配備されたTHAADの運用に制限を設けるという意味だが、過去に中国の国営メディアが複数回使っただけで、中国政府がこの言葉を公式に使用するのは今回がはじめてだ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権発足直後から始まったTHAAD正常化の動きに対し、中国がその中断を求めたものと解釈されている。

 中国外交部の汪文斌・報道官は10日のブリーフィングの際、中国側が前日の韓中外相会談で表明した「安全保障上の懸念を相互に適切に処理する」という言葉の意味を問う質問に「三不一限」という言葉を使い、「中国側は韓国政府の三不一限の立場を重視している」「中韓両国はTHAAD問題を粘り強く安全に処理してきた」と説明した。

 これまで外交関係者の間では、文在寅政権がTHAADの正式配備を遅らせた理由について「一限が理由では」との疑惑が何度も浮上していたが、韓国も中国もその点を実際に認めたことはなかった。それが今回中国政府が「三不」に加え「一限」を「文在寅政権による『宣誓』」と明言したのだ。ある外交筋は「当時康京和・長官が国会で説明した『三不』だけでも『軍事主権の放棄』として問題になったが、もし『一限』も事実であれば、文在寅政権は国民の知らないところで国益と安全保障に反する合意を中国と行ったことになる」と指摘した。

 韓国政府のある高官は「韓中外相会談でも三不は話題になったが、一限については話に出なかった」「中国が今回のような態度に出た意図を把握しているところだ」と説明した。別の政府関係者は「THAAD三不の表明に関与した当事者本人が真実を明らかにすべきだ」と指摘した。本紙は当時「三不」の当事者だった康京和氏と鄭義溶(チョン・ウイヨン)元青瓦台(韓国大統領府)安保室長に取材を試みたが連絡が取れなかった。

 韓国と中国の外相は前日の外相会談で「THAAD三不」問題をめぐり激しい神経戦を繰り広げた。中国の王毅・外相は会談の冒頭「独立自主を堅持し、外部から障害や影響を受けるべきではない」「互いの重大な関心事項に配慮すべきだ」と口火を切った。この発言の「外部」は米国、「重大な関心事項」はTHAADを意味するもので、文在寅政権による「THAAD三不」の実行を求めたのだ。これに対して韓国外交部の朴振(パク・チン)長官は「THAADは韓国の安保主権に直結する事案だ」とした上で「三不は合意や約束ではない」と釘を刺した。朴長官はさらに「北朝鮮が挑発ではなく対話を選択するよう中国が建設的な役割を果たしてほしい」とも発言した。中国に対し「THAAD三不」にこだわるのではなく、北朝鮮の非核化に力を入れるよう求めたのだ。

 これと関連して中国外交部は10日、韓中外相会談の内容の中からTHAADに関する部分のみを整理しウェブサイトで公開した。その内容は「互いの安全保障上の懸念を重視し、適切に処理するよう努力しつつ、両国関係の障害にならないようにすべきとの認識で一致した」というものだ。これまでこの「適切な処理」という言葉は「三不の実行」と解釈されてきた。しかし今回中国外交部が「一限」にまで言及したことで、「適切な処理」という言葉は今後「三不一限の実行」という意味に解釈が拡大されそうだ。

 韓国と中国は先日もTHAADをめぐって舌戦を繰り広げた。朴振長官は先月25日に行われた国会での質疑で「中国が韓国に対し『(THAAD三不を)約束したので守れ』というのは受け入れがたい」と証言した。これに対して中国外交部の趙立堅・報道官は「新しい官吏は過去の負債から顔を背けることはできない」として「THAAD三不」の継承をメディアの前で要求した。北京のある外交筋は「最近の中国の態度は、文在寅政権が中国との『三不一限』の裏合意に応じた可能性を疑わせるものだ」「尹錫悦政権がTHAADの正常化に乗り出したので、これに対抗しているようだ」とコメントした。

 中国は今回「約束」や「合意」ではなく「宣誓」という言葉を使ったが、韓国政府内ではこの点に注目する見方もある。上記の外交筋は「約束や合意は双方の話し合いの結果だが、宣誓は不特定多数の聴衆を前に行う一方的な意思表明に近い」「文在寅政権と尹錫悦政権がいずれも『約束や合意はしていない』と主張しているので、中国が『対外宣誓』という表現を使ったのかもしれない」との見方を示した。

 2017年4月に慶尚北道星州郡に配備された在韓米軍のTHAAD砲台はその後5年にわたり「臨時配備」の状態にある。朴槿恵(パク・クンヘ)政権はおよそ6カ月ほどの小規模環境影響評価により正式配備を進めようとしたが、弾劾政局で発足した文在寅政権は1年以上かかる一般環境影響評価へと方針を変えた。しかしその最初の段階となる協議会さえ構成せず、THAAD正常化を先送りしたため米国の抗議を受けることもあった。

李竜洙(イ・ヨンス)記者、北京=パク・スチャン特派員

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