9日昼に訪れた冠岳区殷川洞・奉天洞・新林洞一帯でも同様の境遇の人々に会った。8日夜、一部屋しかない半地下の家と通路に雨水が入り込み、映画『パラサイト 半地下の家族』のワンシーンがそのまま再現されたような現場があちこちにあった。冠岳区幸運洞にある集合住宅の半地下部屋で暮らす大学生イさん(21)は8日夕、ヘッドフォンをしたままコンピューターで作業をしていた時、家の中まで水が入ってきているのに気づき、被害に遭った。イさんはある大学の写真学科の学生で、授業を受けるため数カ月間アルバイトをしたり両親にお金を借りたりして、カメラ・レンズ・ノートパソコンなどを手に入れたが、今回の浸水ですべて水びたしになったという。冠岳区新林洞の半地下部屋で暮らすホンさん(27)も「隣に脳卒中の後遺症があるおじいさんが暮らしている。ドアが開かなくなって孤立するところだったが、私と近所の人々が助けてやっと避難できた」と語った。ソウル市立大学消防防災工学科のユン・ミョンオ教授は「半地下部屋は構造上、水が真っ先に入ってくる場所だ。突然水が入ってくると水圧のためドアが開けにくくなるため、水害事故において最も脆弱(ぜいじゃく)な空間だ」と説明した。
ソウル市西大門区内で低所得層が多いことで知られている弘済洞の通称「蟻(アリ)町」も同じ状況だった。9日、町の入り口に入ると、コンクリートやレンガの塀が崩れていたり、家庭菜園の農作物が土砂で押し流されていたりする状況があちこちで目についた。夫と一緒にこの町で10年暮らしているチョン・オクチュさん(81)の家は雨漏りのため天井が30センチメートル以上も下がっていた。天井裏の赤さびが水と混ざって家の中に流れ込み、部屋の中にあったタオルや下着などの洗濯物が全部ぬれて赤く染まっていた。チョンさんは「独立功労者の夫が受け取っている支援金110万ウォン(約11万円)が1カ月間の生活費のすべてなので、天井の修理費に数十万ウォン(数万円)もかけられない」と嘆いた。
パク・チミン記者、キム・フィウォン記者