熟年夫婦も「ジェンダー対立」…韓国人男性の離婚相談、半数が60代以上

【韓国ジェンダーリポート2022】〈第10回〉

 中央省庁の公務員として働き、8年前に退職したキムさん(68)は、5年前からタクシー運転手として働いている。公務員だった時は「退職したら休もう」という思いで持ちこたえてきたが、実際に退職してみると、ゆっくり休む方がよりつらかった。いつも家にこもっているわけにもいかず、かといって外に出ようとすると金がかかった。家事に対してしきりに小言を言うようになり、妻との対立も生じた。妻は「若い時とは違って、年を取ったのか変わってしまった」と恨めしそうに話す。キムさんは「収入は年金、財産は一軒家だけだが、ためておいたお金も使い込んでいる状況で、妻の顔色までうかがうようになり、うつ病まで患った」という。

 元貨物トラックの運転手だったAさん(65)は昨年、離婚相談を申請した。「危険な仕事に就いていたので、万が一に備えて家も妻の名義にし、これまで一生懸命に働いてきたが、2年前に仕事を辞めてから妻との口げんかが増えた」というAさんは「妻は孫娘の面倒を見なければならないと言って娘の家に行っては数カ月間帰ってこない。そこで私が行くと言うと嫌がる。私の人生は一体どうしてこうなってしまったのか」と嘆く。

 ジェンダー対立は、老後も絶えない。朝鮮日報とソウル大学社会発展研究所が16歳以上の男女1786人を対象に「2022大韓民国ジェンダー意識」と題するアンケート調査を行った結果、ここ1年間で配偶者との間に対立が生じたと答えた男性は「60代以上」で60.9%と最も多かった。女性は20代(69.1%)、50代(66.7%)、60代以上(58.4%)の順だった。

 結婚生活30年以上となった夫婦の「熟年離婚」も大幅に増えた。韓国家庭法律相談所で昨年離婚相談を申請した全男性のうち、60代以上は47.7%と約半数に上った。2011年の15%から3倍に増えたのだ。同期間、60代以上の女性の相談も、9.2%から25.7%へと増加した。実際、熟年離婚に踏み切った人も、2011年の7900件から21年には1万7900件と、127%増となった。

 韓国家庭法律相談所のパク・ソヒョン法律救助第2部長は「家庭における女性の発言権が拡大し、引退した男性が妻と子どもたちに疎外されているように感じると訴えるケースが増えた」とし「昔は男性が自分の恥ずかしい姿をさらけ出してまでカウンセリングを受けようとはしなかったが、今では苦しみに耐え切れず、突破口を求めて訪れる老人が多くなった」と説明した。

キム・ヨンジュ記者

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  • ▲ソウル市瑞草区のソウル家庭裁判所・ソウル行政裁判所庁舎/朝鮮日報DB

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