現代自の一高三低構造は日本のトヨタと明らかな違いがある。現代自は国内で赤字を出し、海外でこれを埋め合わせているが、それとは違いトヨタは海外はもちろん国内市場でもさらに大きな収益を出している。企業の生き残りを最優先と考える労使双方が共に築き上げた圧倒的な生産性のおかげだ。これによってトヨタはテスラによる電気自動車革命の中でも最大のパイを守り、電気自動車への転換に向け着々と準備している。
現代自は「電気自動車への転換はそれでもわれわれがトヨタの先を行っている」と言うかもしれない。しかし冷静に見ると現代自は電気自動車市場でテスラ、従来の内燃車とハイブリッド車の市場ではトヨタに必死でついていくしかない立場にある。
テスラ中心の大きな変化の中で自動車メーカーはIT企業化している。自動車産業の変化のスピードが今後はるかに早くなるという意味だ。アイフォーンの出現に対応できずノキアやモトローラが消えたように、同じことが自動車業界でも起こりかねないということだ。インテルの元CEO(最高経営責任者)アンディ・グローブ氏は「ビジネスの世界では偏執狂だけが生き残る」と語った。メモリーを放棄した米インテルをシステム半導体の最強メーカーとしたグローブ氏は「一瞬の転換点を逃せば生存競争で永遠に消え去るしかない」とも警告した。
ところが現代自を巡っては「他のグローバル企業のような危機感や切迫感はあまり感じられない」との指摘が相次いでいる。電気自動車への転換という巨大な変化の中で生き残るには現代自も自ら奮発すると同時に、労働組合が特権を手放すことが何としても必要だ。それができない場合、蔚山発の「ブルーカラー年収1億ウォン時代」が今年か来年に実現したとしても、次の世代の労働者には引き継がれない韓国自動車産業の単なる一時的な追憶に過ぎなくなるかもしれない。
李吉星(イ・ギルソン)記者