「戦争というとてつもなく大きな悲劇の前で、私が任期中に何かやり残したのではないか毎日自らに問い続けている」
アンゲラ・メルケル前独首相が7日(現地時間)、自身の演説集の出版を記念して行った公開対談イベントで、ウクライナを侵攻したウラジーミル・プーチン露大統領を強く批判した。メルケル氏がロシアのウクライナ侵攻について公の場で言及したのは、今月1日のドイツ労働組合連盟委員長退任式時の発言に続き2回目だ。
メルケル氏は同日、ベルリンにある劇場「ベルリーナー・アンサンブル」で行われたイベントで、「ウクライナ侵攻は野蛮な行為だ。いかなる観点からも許されない」と述べた。 「ロシアによる侵攻は露骨な国際法違反であり、第二次世界大戦後の欧州の歴史に深刻な断絶を招いた事件だ」と述べた1日の発言と同じ脈絡の批判だ。同氏は「ロシアがウクライナを侵攻した日(今年2月24日)は私個人にとっても胸が押しつぶされ、苦しまされる転換点になった」「私の任期期間中に(戦争を防ぐために)しなければならないことがあったのではないかと自らに問い続けている」とも言った。
メルケル氏は16年間にわたる任期期間中、プーチン大統領に60回以上会い、同大統領に最も多くの影響を及ぼした欧州の政治家と言われている。しかし、その間にロシアに対して融和的な政策を展開し、プーチン大統領が「ウクライナを侵攻しても欧州は介入できないだろう」という誤った判断をさせたと批判された。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟反対、ロシアのクリミア半島併合に対する生ぬるい対応、ロシア産天然ガスの輸入拡大などが代表的な例だ。
メルケル氏は自身の過去の政策を積極的に擁護した。同氏はウクライナのNATO加盟に反対したことについて、「あの時ウクライナをNATOに加盟させようとしていたら、プーチンがウクライナに(戦争のような)途方もない報復をしたことは明らかだ」と強調した。また、「ウクライナは当時、(腐敗した政治家と)新興財閥などが支配する国だったため、すぐにNATOに加盟させて防衛を約束できる状況ではなかった」と言った。
メルケル氏はまた、「プーチンは西方の民主主義モデルを嫌い、欧州連合(EU)を破壊したがっていた」「(これにより)旧ソ連崩壊後、ロシアとの冷戦的対立を終わらせるための努力が成功しなかった」とも語った。自身の政策としてはロシアを欧州安全保障体系に引き込み、しっかりとした平和体制を構築しようとしたものの、これが意図とした通りにならなかったのはプーチン氏のせいだということだ。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今年4月、「2008年にメルケル独首相とニコラ・サルコジ仏大統領(当時)の反対でウクライナのNATO加盟が挫折し、これがロシアに(欧州はウクライナの味方をしないだろうという)間違ったサインを与えた」と批判していた。
パリ=チョン・チョルファン特派員