韓国政府部処(省庁に相当)間の縦割り構造のせいで発生した「統計死角地帯」の代表的な事例は、高齢者貧困率だ。韓国の高齢者貧困率は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最悪だという指摘があるが、肝心の高齢者の所得がどれくらいあるのかを知る基本的な統計すらない。
韓国の高齢者貧困率(2018)は43.4%で、OECD平均(14.8%)の3倍に達し、加盟37カ国の中で最も高い。この数字は、実際に使うことのできる可処分所得が全人口の中間所得よりも低い65歳以上の人口の割合を指している。
だがOECDの高齢者貧困統計は、韓国統計庁が2万世帯を対象に調査を行った「家計・金融福祉調査」を土台としているため、正確さに問題があるとの指摘がなされている。韓国保健社会研究院などは、韓国の所得など有意な統計を取るに当たり、2万世帯では調査対象の規模が小さいと.評価した。統計庁の関係者も「他機関から所得資料を渡してもらえれば細かく分かるはずだが、この統計は設問形式なので正確ではない」と語った。
不動産などの資産から発生する所得は「ゼロ」で処理している点も、正確な統計とは見なし難い。家を担保に老後資金の借り入れを行ったり月決めの家賃を受け取ったりしても、所得は「ゼロ」で処理されるからだ。韓国の高齢層の資産は大部分が不動産(住宅)に偏っており、こうした基準で所得を測定したら貧困率が高くなるのは避けられない。
専門家らは、高齢層の所得をきちんと把握するには国税庁の所得資料と国民年金など4大年金の資料、保健福祉部(省に相当)の福祉制度統計などを連携させなければならないと指摘する。韓国政府は2015・16年にも、所得および財産保有現況を反映させて高齢者の貧困の実態を把握できる指標の開発を進めたことがある。
統計庁によると、5年ごとに実施する人口住宅総調査にそれぞれの統計と資料を連結すれば、高齢者雇用事業に参加している韓国首都圏の高齢者が国などから受け取っている所得(移転支出所得)などが分かる。韓国の全国民を対象にしている人口住宅総調査は、住んでいる場所、家族関係といった程度の情報を含むだけだが、ここに各部処の行政資料を付け加えることで、より細かな分析が可能になるのだ。
だが現実は、部処間の協力がなされず、関連統計の把握が不可能になっている。統計庁が統計の提供を要請しても、他の部処に応じる義務はないからだ。統計庁も「こういう部分で弱点がある統計」と言うだけで、これを補完するきちんとした高齢層所得統計を打ち出すことができていない。
キム・テジュン記者