韓国中央選挙管理委員会のチョ・ヘジュ常任委員が21日、遂に辞任した。選管職員の集団反発という、未曽有の事態に直面したからだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領選挙陣営の特別補佐出身のチョ常任委員は、文大統領が委員に任命した当時から政治的偏向を巡って議論になっていた人物だ。そんなチョ常任委員が「小賢しい」手口で任期を延長しようとして、選管の独立性と中立性に対する国民的な疑念を呼んだことから、選管職員らが集団行動に出たのだ。これにより文大統領も、選管の公正性に対する国民的信頼を損なったという批判を避けられなくなった。
チョ常任委員は、20日の時点では、任期満了後も非常任委員としてさらに3年任期を延ばしたいという立場を崩していなかった。今月24日に常任委員の任期(3年)が終わるチョ氏は、今年初めに辞表を提出したが、文大統領はこれを差し戻した。すると野党はもちろん選管内部からも「現与党は大統領選挙と6月の地方選挙を、親与党の選管委員が監督する中で行おうとしている」と批判が出た。
まず、中央選管の幹部陣などが今月20日に集団声明を出し、韓国国内17市・道の広域選管指導部の関係者までもチョ常任委員の辞任要求に乗り出したことで、事態はさらに拡大した。中央選管委員室・局長団、課長団、事務官団は共同声明を出し、チョ常任委員の辞任を求めた。一同は声明で「選挙管理において困難がさらに重くなるおそれがある」とし、「選挙が迫っている時点で(退任の)チャンスを逃したら、2大選挙(大統領選挙・地方選挙)の過程や結果に対する外部の非難と不信は続くだろう」と指摘した。幹部中心の動きに、6級以下の職員の協議体に当たる「幸せ仕事場作り委員会」も声明賛同の意思を表明した。事実上、選管職員全員が「中立性が損なわれる」として行動に出たのだ。一部の選管職員は、チョ常任委員の家を訪れて辞任要求書を直接届けようとする一方、盧貞姫(ノ・ジョンヒ)中央選挙管理委員長に面談を要請した。チョ常任委員は今月19日から年次休暇を取り、出勤していなかった。このため選管職員はチョ常任委員の秘書官を通して辞任要求文を届けたという。
中央選管内部のネットワークにも「血を吐く思いで退任をお願いする」「主君の文(大統領)が与えたポストだから離れないのか」といった批判コメントが数百件も載った。ある職員は、ネットワークのコメントで「数十年かけて積み上げてきた選管の公正性を損なった」と批判し、別の職員は「国民の信頼を失ったら、改憲時に行政安全部(省に相当)の選挙管理課と自治体に分割されるだろう」と書き込んだ。
チョ常任委員が辞表を出しても大統領が差し戻したから、という理由で任期を続けようとすることについて、ある職員は「大統領が引き留めても固辞すべきだ。冷淡ではない」と記した。「組織に愛情がない人間は定見もない、というのが一層悲しい」「選管は果たして憲法機関として存在しているのかと問わざるを得ない」といった書き込みもあった。「ばかにしてもいいですよ。解任するならしてみてください。主君である文がお与えになったポストですからね」と、チョ常任委員を皮肉るコメントも載った。
憲法機関の選管職員が集団行動に出るというのは前例がない。チョ常任委員の任命後、2020年の4・15総選挙における不正選挙疑惑など、選管の中立性を巡る韓国政界および市民社会の批判が絶えることはなく、選管職員らの自らを恥じる気持ちと不満が積もり積もって爆発した、という声が出ている。実際、昨年の4・7ソウル市長補欠選挙で選管は与党「共に民主党」を連想させる青色のタクシー用ラッピング広告を作って物議を醸した。選管はTBSの「イル(1)しましょう」キャンペーンは問題にしなかったが、「補欠選挙なぜやるの?」「ネロナムブル」(自分がやったらロマンス、他人がやったら不倫)といった文言は使えないようにし、与党寄りだという反発も起きた。中立と公正性が命の選管が、最近になって政界はもちろん韓国国民からも非難を招くような決定を行ったのは、選管委員の構成の偏りが影響したのではないか-という内部批判が強まることになった。中央選管の元幹部のある人物は「1963年に選管が設立されて以来、初めての事態を招いたことについて、中央選管委員長と大統領は深刻に考えるべきだろう」と語った。
ノ・ソクチョ記者