【コラム】小国リトアニアに学ぶ中国の扱い方(上)

台湾代表部設置後、中国による経済報復攻勢にEU内の反中世論戦で対抗
米国の価値観外交に加わり安全保障と経済の実利を追求

 今年の初めから中国により通関を拒否され、海上で行き場を失っていたリトアニアのラム酒2万本を台湾が買い取ることにしたとのニュースが報じられました。リトアニアは自国に台湾代表部の設置を認めたため中国から経済報復を受けましたが、台湾がこれに支援の手を差し伸べたわけです。

 米国で昨年バイデン政権が発足してから欧州と中国の関係は以前とは異なり悪化の一途です。その先鋒(せんぽうに立つ国がすなわちバルト海の小国リトアニアです。

■いわゆる暴力妨害事件のバタフライ効果

 リトアニアでは2020年10月の総選挙によって自由・保守連立政権が発足し、これにより中国との関係が悪化し始めました。同年8月にリトアニアでは市民が香港の犯罪人引き渡し法改正案に反対する集会を開催しましたが、現地の中国大使館員と中国人たちがこれを暴力で妨害し、メガホンを奪うなどした事件がそのきっかけになったそうです。

 2008年北京オリンピックの聖火リレーでは韓国でも中国人留学生たちがオリンピック反対デモを行う韓国人を暴行しましたが、これと同じような事件がリトアニアでも起こったわけです。自由民主主義国家では容認し難い出来事が現地の中国大使館を中心に行われたのです。

 中国は中欧と東欧で一帯一路政策を推し進めるため、中国と中欧・東欧・バルカン諸国17カ国による経済協力首脳会議「17プラス1」に力を入れてきましたが、リトアニアは昨年5月にここからの離脱を宣言し、中国への批判を強めました。「中国からの投資は受けない」ということです。

 7月には首都ビリニュスに台湾代表部の設置を認めると発表しました。9月にはリトアニア国防省次官が中国のシャオミやファーウェイのスマホについて「セキュリティー上の問題がある」と直接指摘し「中国スマホは購入せず、すでに購入したなら捨てなさい」と国民に呼び掛けました。11月には中国の反対を押し切り台湾代表部が設置されました。

 中国と外交関係を結んだ国に台湾の公式機関が入る場合は通常なら「台北」という都市名を使用します。「台北代表部」などです。「台湾という国名を使うのは国交締結時に合意した『一つの中国』の原則に反する」というのが中国の主張です。しかしリトアニアは「台湾代表部は経済・文化交流に向けた機関であり、一つの中国という原則とは矛盾しない」と反論しています。

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