新世界デパートなどを核とする小売業大手・新世界グループの鄭溶鎮(チョン・ヨンジン)副会長が10日、政界にまで広がった、いわゆる「滅共(ミョルゴン=共産主義を滅亡させるという意味)騒動」と関連して、「滅共はある人にとっては政治だが、私にとっては現実だ」と述べた。これは、鄭副会長が同日、写真共有ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「インスタグラム」に「事業をやっていると、こいつら(北朝鮮)のせいで外国から金を借りると利子を多く払わなければならないし、ミサイルを撃てば投資も全部吹っ飛ぶ。痛い目に遭ったことがあるか?」と書いた後に投稿した文だ。新世界グループ側は同日夕、「鄭副会長は周囲の人々に『もう滅共関連発言はしない』と語った」と伝えた。
鄭副会長は5日のSNS投稿時に、写真と共に「滅共」というハッシュタグを付けたが、インターネット上ではこれが現政権の北朝鮮寄り・中国寄りの言動を遠回しに非難するものと受け止めていた。その後、野党関係者らは「煮干し(韓国語でミョルチ)」と「豆(韓国語でコン)」の写真をSNS上にアップロードする、いわゆる「滅共チャレンジ」を行う一方、与党側はこれを批判し、騒動が政界に急速に広がっていた。
鄭副会長はこの日、「なぜ『コリア・ディスカウント』をされる(=韓国が下に見られる)のか、知っている人たちは私に何も言えないだろう」「実業家として生きて死ぬんだ。政治うんぬんなどと言うな」「いつミサイルが飛んでくるか分からない不安な毎日を迎えている国民として感じる当たり前の気持ちを語ったまでだ」と書き込んだ。そして、「あいつらはミサイルを飛ばして核兵器で脅しているのに、安全なんてどこにあるのか」「ある分野では韓国と日本にだけ保険割増がある。それは戦争のリスクと地震のリスクがあるからだ」と投稿した。
鄭副会長はさらに、「私の日ごろの言葉が政治に利用され得るということまで計算する勘や、どこで冠を正すべきか周囲の様子を見て早く気付かなければならないセンスが実業家に必要な資質ならば、それを養う」と話した。
野党・国民の力の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領選候補は「自由民主主義の憲法秩序内では意思表現の自由がある」としながらも、「(煮干しと豆は)近くのEマート(新世界グループ系列の大型スーパー)に行って、必要だから買っただけだ」と述べた。同党の李俊錫(イ・ジュンソク)代表も「政策より理念的アジェンダが関心を持たれる状況を作らないでほしい」としている。
一方、与党・共に民主党の宋永吉(ソン・ヨンギル)代表は「色分け論で票を分ける姿は実に幼稚だ。(尹候補は)イルベ(極右性向を持つインターネット・コミュニティー・サイト)のようなことをしている」と語った。同党選挙対策委員会のヒョン・グンテク報道担当は「今後は(新世界グループ系列の)スターバックスコーヒーは飲まない」と言った。
趙義俊(チョ・ウィジュン)記者、キム・スンヒョン記者