(3)「基準が変わる防疫」が招いた不信感
専門家らは昨年11月から今年初めまで続いた流行第3波を「K防疫に対する国民の信頼が崩壊した決定的な時期」と見なしている。一日新規感染者が1000人を上回り、感染源を追跡・検査する「3T」システムも事実上、無用の長物になった。専門家らは「今は疫学調査よりもハイリスク群保護を中心にした現実的な防疫を検討すべきだ」と言った。しかし、政府は逆に検査数をさらに増やし、強度の高い防疫対策措置を長期間維持する「新型コロナ・ゼロ」政策を固守した。新型コロナ危機が短期間で終わるという根拠のない楽観と「少ない感染者」を成果として掲げたK防疫への執着だった。
翰林大学聖心病院のチョン・ギソク教授は「政府が定めた防疫対策措置基準を政府自ら守らないのが最大の問題だ」と指摘した。政府は昨年11月上旬に防疫対策措置の段階を改編し、同段階を突然引き下げた。そうした中で感染者が急増し、医療体制がひっ迫する「第3段階」に相当する状況に達したが、政府は「第3段階を施行すれば社会的・経済的被害が大きくなる」として、「第2.5段階」「第1.5段階」といった「0.5」刻みの措置を繰り返した。
今回の危機でも同様のことが繰り返されている。先月末から首都圏の医療体制が事実上ひっ迫状態に達しているが、政府は公言していた「非常事態計画」を発動していない。ただ「総合的に判断する」というあいまいな回答ばかりだ。
(4)ワクチンをめぐり右往左往…ウィズコロナ措置もこじれる
防疫失敗で世論が悪化すると、政府は遅ればせながらワクチン導入を急いだ。国産ワクチンの開発に根拠のない期待をかけた分、契約合戦参入が遅れたせいで、契約したワクチンのほとんどが今年下半期に届いた。チェ・ジェウク教授は「重要な防疫決定が科学や医学に基づいておらず、その都度、世論の様子をうかがった政治的判断で行われた、というのがK防疫の実体だ」と言った。
ワクチン供給不足がたびたび起こると、政府は任意で1回目と2回目の接種間隔を変え、交差接種も突然許可した。秋夕(チュソク=中秋節、今年は9月21日)前に1回目接種率70%を達成するため、2回目接種分を1回目接種に前倒しで使用するという措置だった。 今年6月に感染力の強いデルタ株が韓国国内に広まり、ワクチン接種による集団免疫獲得も事実上、不可能になった。専門家らは「接種率達成に固執せず、ハイリスク群から接種を完了させていくことが重要だ」と言ったが、政府は集団免疫獲得という目標を撤回せず、接種率達成にのみこだわった。
今年10月から既に死亡率上昇の兆しが出ていたのにもかかわらず、政府がウィズコロナ措置を強行したことは今も物議を醸している。政府関係者は「10月はウィズコロナ措置を取るべきだという国民の世論が絶対的に強かった」と反論したが、専門家らは「政府が『新型コロナの死亡率が高まっている』という危険信号を正しく知らせていれば、世論はいくらでも変わる可能性があった」と反発している。
(5)感染者を減らそうと恐怖心に訴えたK防疫の限界
K防疫に対する評価で欠かせないのは「国民の協力」だ。「韓国人ほど感染予防マニュアルをよく守り、ワクチン接種に協力的な国はない」というのが専門家らの話だ。しかし、国民が協力的なのは、政府が新型コロナに対する恐怖心をあおった影響も少なくない。
マ・サンヒョク副会長は「感染者を見ると、50代以下はこれといった症状がないか、軽症の場合がほとんどなのに、『とにかく新型コロナにかかってはならない』という論調で感染者を減らすことだけに集中してきた」「政府が新型コロナに対する恐怖心を強めたため、国民はさらに強い防疫政策を要求するという悪循環が繰り返された」と語った。
かつて一日新規感染者が2万人以上発生し、嘲笑された日本のJ防疫が最近になって再評価されているのも、こうした脈絡上にある。『K防疫はない』の共著者である関西外国語大学のチャン・ブスン教授は「韓日間の防疫の違いは成績よりも戦略にある」「日本は選択的に検査して重症者に医療資源を集中させるなど、初めから総合的な安定性を重視した」と指摘した。現在の危機はハイリスク群保護と日常生活と防疫のバランスではなく、感染者数を減らすことにあくせくしてきたK防疫の断面が表面化した結果だということだ。
ペ・ジュンヨン記者