韓国JTBCが放映したドラマ「雪降花(ソルガンファ)」が波紋を広げている。ドラマが民主化運動をおとしめ、国家安全企画部(安企部)を美化したとする趣旨の国民請願が青瓦台の30万件以上寄せられたのに続き、否定的な世論に驚いた企業が相次いでスポンサーを降板している。JTBCのウェブサイトにはドラマの放送中止を求める書き込みが約3000件あり、放送通信審議会には21日午前までに審議を求める要望が740件余りあった。「雪降花」は今年3月にストーリーの大略が流出した際にも論議を呼んだ。「実際にドラマを見れば誤解が解けると言っていたが、懸念が現実になった」とする批判が根強い中、ドラマの放送中止を求めるのは性急だとの声もある。
【写真】BLACKPINKジス&チョン・へイン、まぶしい2ショット=『雪降花』の制作発表会
ドラマは1987年の韓国大統領選当時のソウルを舞台としており、ある女子大の寄宿舎に留学生を偽装したスパイのイム・スホが血まみれで駆け込み、デモで負傷したと誤認した女子大生ウン・ヨンロがそれをかくまって治療し、ロマンスが芽生えるというのが基本ストーリーだ。そこに南北対立を政治的に利用しようという軍事政権情報機関の陰謀がブラックコメディーのように盛り込まれている。人気俳優チョン・ヘイン(イム・スホ役)とK-POPグループ「BLACKPINK」のジス(ウン・ヨンロ役)が出演していることで話題になった。
否定的な世論が広まると、デリケートな企業がまず手を引いた。チョン・ヘインを広告に起用したチキンチェーンの「プラダック」をはじめ、「ナッツシェイク」の製造元P&Jなどの後援企業は「チョン・ヘインとジスが主人公になることだけを見て、うかつな決定をした」という謝罪文を公表し、支援撤回を表明した。宿泊アプリ、靴メーカーなどの協賛企業も協賛中断意向を示した。民主化運動関連団体は「民主化運動とスパイ、安企部を結び付けること自体がもう一つの加害行為だ」と反発した。
ドラマ評論家のユン・ソクチン忠南大教授は「1987年の時代状況を素材として用いておいて、悲劇的なラブストーリーとして見てほしいという点には同意できない。創作の自由は保障されるべきだが、放送を続ければ、それに伴う責任も明らかに負わなければならない」と指摘した。一方、大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は「まだ1、2回しか放送されていないが、ドラマの放送中止に言及するのは性急だ。先ごろの『朝鮮駆魔師』(SBS)の放送中止騒動が繰り返されるならば、製作者にとっては深刻な事態だ」と懸念を示した上で、「韓国社会に健全な論議の場が不足していることを示している。対話と話し合い、説得のプロセスがないから、放送継続か中止という両極端の選択しかないと考えるのだ」と主張した。
JTBCは21日、声明を発表し、「歴史歪曲(わいきょく)と民主化運動中傷懸念はドラマの展開過程で大部分が解消される」と説明した。ドラマは18日に放送された第1回の視聴率が2.34%(TMNS調べ)だったが、論議を呼んだ後に翌日放送された第2回の視聴率は3.2%に上昇。同日総合編成チャンネル(地上波以外の総合編成局)で放送された番組で4位を記録した。
イ・テフン記者