「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が権力を握ってから北朝鮮では銃殺部隊などによる広範囲な公開処刑が行われている」とする脱北民の証言が新たに公表された。北朝鮮当局は公開処刑に関する情報の外部への流出を統制しており、国際社会による監視を難しくするため現場での携帯電話使用を徹底して禁止するなど隠蔽(いんぺい)に力を入れていることも分かった。国際人権団体の転換期正義ワーキンググループ(TJWG)は15日、これらの内容が記載された報告書「金正恩時代10年の処刑地図」を公表した。
報告書は過去6年間に韓国に入国した脱北民683人から聞き取りを行った内容や衛星地図、地理空間情報(GIS)技術などを使って北朝鮮当局がどこでどのように処刑を行ったかを分析した。報告書によると、金正恩執権後に処刑が行われた場所に関する記録は27件あった。その中で銃殺部隊による公開処刑は23件、絞首刑に関する証言は2件あった。「極秘に処刑が続いているようだ」との陳述もあった。
処刑の状況に関する証言も数多くあった。報告書は「2012年と13年に平壌では処刑される人の家族を最前列に座らせ、全ての過程を見させた」「ある父親は息子の遺体が燃やされる様子を見て気絶したという陳述もあった」と伝えた。さらに「2012年に咸興市では公開処刑によって頭が割れた遺体の前に住民を一列に並ばせ、顔を見させたという陳述もある」とも記載されていた。
ある脱北者によると、2014年に黄海北道沙里院市で行われた公開処刑の際には木の柱に死刑囚を縛り付け、その口の中に砂をいっぱいに入れていたという。また両江道では2013年に10人以上が集団で一度に処刑されたこともあった。
公開処刑の理由は「韓国の映像視聴・配布(7件)」「麻薬関連(5件)」「人身売買(4件)」「殺人・殺人未遂(3件)」「淫乱行為(3件)」などだ。北朝鮮当局は情報流出を防ぐため公開処刑の場所に住民が携帯電話を持ち込むことを禁止し、電波探知機車両を現場に配置するなど監視や統制を強めているという。転換期正義ワーキンググループのイ・ヨンファン代表は「過去には中国との国境付近でも公開処刑が行われたが、金正恩の時代になると公開処刑のほとんどは隠蔽目的で国境や都心から離れた恵山飛行場やその周辺の傾斜地、山の急斜面、開けた場所、野原などで行われているようだ」と述べた。
キム・ミョンソン記者