ED治療薬の「シルデナフィル」成分、アルツハイマー型認知症の発病リスクを抑える効果を確認(上)

米国で患者700万人のビッグデータを分析

 勃起不全治療薬の「バイアグラ」の成分が、退行性脳疾患のアルツハイマー性認知症を予防し得るとする研究結果が出た。人体を対象とした臨床試験の結果ではなく、遺伝子、タンパク質情報に基づいてコンピューター上で仮想実験を行った結果だが、数百万人の診療記録からも、当該成分を服用した人がはるかにアルツハイマー型認知症にかかりにくいことが確認された。今後、後続の臨床試験においてバイアグラのアルツハイマー予防効果が立証されたら、人に言えない男性の悩みの解決にとどまらず、世界の全ての人々の未来において新たな希望になるものと期待されている。

【図】バイアグラのアルツハイマー予防効果、どうやって見つけ出したか

■仮想実験での予測を診療記録で確認

 米国クリーブランド・クリニック・ゲノム医学研究所のフェイシュン・チェン博士の研究陣は6日(現地時間)、国際学術誌「ネイチャー・エイジング」で「大規模な人体情報と診療記録の分析を通して、(バイアグラの)『シルデナフィル』成分がアルツハイマー型認知症の治療剤として使えることを確認した」と発表した。シルデナフィルはバイアグラや、肺動脈高血圧の治療剤「レバチオ」の薬効成分だ。どちらも末梢(まっしょう)血管を拡張して血液の流れを助ける。

 アルツハイマー型認知症は世界で5000万人以上に苦痛を与えているが、これといった治療薬がない状態だ。今年6月、米国のバイオジェンと日本のエーザイが開発したADUHELM(一般名:アデュカヌマブ)が18年ぶりにアルツハイマーの新薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けたが、その効能を疑う専門家は依然として多い。

 クリーブランド・クリニックの研究陣は、アルツハイマー病を誘発するといわれる「βアミロイド」と「タウタンパク質」に作用する薬物を探した。βアミロイドは神経細胞を保護するタンパク質だが、細胞から離れ落ちて塊になると、逆に神経細胞に損傷を与える。タウタンパク質は細胞内で神経繊維の凝集体を形成し、やはり損傷を引き起こす。製薬各社は数十年にわたり、βアミロイドとタウタンパク質にそれぞれ作用する治療剤を開発したが、目立った成果は得られなかった。

 今回研究陣は、治療剤として効果を得るためには両方のタンパク質に作用する薬物でなければならないと予測した。まず、人間の遺伝子解読情報と35万1444種類のタンパク質相互作用マップを基に、βアミロイドとタウタンパク質が同時に作用する人体の部位を探した。

イ・ヨンワン科学専門記者

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