■「オミクロン株が迫っているのに、また『一時しのぎ』」
主な大病院の状況は急速に悪化している。京畿道にある大型病院の専門医は「うちの病院は今、応急処置室に急いで臨時の陰圧室を設置しようと非常事態に陥っている」「搬送されてきた脚の骨折患者や、緊急手術の患者が後になって新型コロナに感染していることが分かっても、受け入れる場所がないので設置しよう、という苦肉の策だ」と言った。
政府は最近、首都圏の病院に対して「保有病床の1-1.5%を新型コロナ患者用病床にせよ」という行政命令を繰り返し出している。しかし、新型コロナの重症者用病床はすぐに設置できるわけではない。首都圏のある大型病院の関係者は「新型コロナ患者を治療するための陰圧室を作るには設備工事が必要で、新型コロナ患者が移動する時にほかの患者と遭遇しないように移動の動線まで考慮して新たな空間を確保しなければならないため、通常は数週間かかる」「さらに、新型コロナ患者のケアをするための医療従事者を追加しなければならないが、今いるほかの重症者をケアしている医療従事者を、新型コロナ患者だけ見ろと言うこともできず、懸念している」と話した。
政府としても「病床不足」は予期せぬ事態だ。「(政府は)『一日5000人を上回る感染者が出ても持ちこたえられる』と言って病床の準備を怠った」と指摘されている。高麗大学医学部のチェ・ジェウク教授は「いつも緊急の状況になってから病院を呼び集めて『何とかして病床を用意しろ』というような『一時しのぎ』ばかり繰り返してきたのは事実」「最近の病床不足問題は政府の過ち」と批判した。今のような緊急の状況では、緊急の対策を打ち出すべきだという指摘もある。梨花女子大学木洞病院呼吸器内科の千恩美(チョン・ウンミ)教授は「今でも病床に余裕がないのに、オミクロン株まで広がれば本当の一大事だ」「体育館でも運動場でも臨時の病床を何とかして早く増やさなければならない」と訴えた。
■重症者用病床に皮膚科・眼科医を派遣
病床不足よりも急を要するのは医療従事者不足だ。政府はこのほど、首都圏の医療従事者不足を穴埋めするために公衆保健医師(農村などの公衆保健業務に携わる医師)たちを急きょ駆り出した。首都圏でない地域の公衆保健医師47人を首都圏の病床に投入したのだ。ところが、新型コロナ治療に必要な内科専門医は1人もいなかった上、皮膚科医・眼科医など重症者の治療の助けとはなりにくい分野の専門医が多数含まれていたという。
大韓公衆保健医師協議会の資料によると、公衆保健医師47人のうち小児・青少年科専門医(12人)が最も多く、以下、整形外科(7人)、皮膚科(4人)、リハビリテーション医学医・診断検査医学医・放射線腫瘍学医・眼科医(3人)だったという。重症者の治療を行うことができる麻酔医学科専門医は2人だけだった。専門性を考慮せずにとにかく人員をあてがったため、一部の病院では公衆保健医師を派遣してもらえなくなったり、専門医の資格を持った公衆保健医師に「採血」「導尿カテーテル抜去」などのインターン業務を任せたりするようなことまであったという。医療従事者を送り出すよう要求された一部の島しょ地域では「地域医療がマヒする」としてこれを拒否した。大韓公衆保健医師協議会のイム・ジンス会長は「自治体や当協議会と事前協議もなく名簿を出させ、現場は混乱した」「事前に協議があれば、麻酔医や耳鼻咽喉科医など間接的でも重症者の治療に寄与できる公衆保健医師を派遣できた」と述べた。
金成謨(キム・ソンモ)記者、キム・テジュ記者、ソ・ユグン記者