中国とロシアは、この分野で米国より先行していると評価されている。ロシアは2019年末に中距離極超音速弾道ミサイル(IRBM)「アバンガルド」を実戦配備した。速度はマッハ20以上で、最大16発の弾頭を搭載できる。昨年には新型極超音速巡航ミサイル「ジルコン」の試射に相次いで成功した。マッハ8以上のスピードで飛んで米空母などを打撃できる、射程1000キロのミサイルだ。ロシア軍は2022年中に水上艦もしくは潜水艦などへ実戦配備するだろうといわれている。
中国も2019年10月の建国70周年軍事パレードで、極超音速ミサイル「DF(東風)17」を初公開した。DF17は核弾頭型の極超音速滑空体を搭載し、マッハ10以上で飛行する。こうした中ロの極超音速ミサイルは、米空母はもちろん在韓・在日米軍基地も狙っているとの分析がある。
中ロが米国のMDを突破しようと攻撃的に極超音速ミサイル開発に乗り出す一方、米国防総省はこれまでこの兵器の開発に消極的だったという。韓国軍事問題研究院が昨年3月に発行した「米陸海軍用共同極超音速滑空体試験 世界軍事動向リポート」によると、米国防総省はさまざまな類型の核弾頭弾道ミサイル、通常弾頭巡航ミサイルなどの開発・生産の方に重点を置いてきた。しかしトランプ政権時代の2018年、中国とロシアの開発スピードに危機感を覚え、遅まきながら極超音速打撃体の開発に優先順位を付与し、開発速度が上がり始めた。
3カ国の他、オーストラリア・日本・インドなども極超音速ミサイルの開発に乗り出しているが、実戦配備の水準には至っていないと評されている。韓国でも昨年8月、国防部(省に相当)の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)長官が、国防科学研究所(ADD)創立50周年記念式典で開発計画を初めて公開した。