ブルームバーグ通信は23日、「米国政府は半導体各社が協力しない場合に備え、特定の製品の生産、政府の政策への協調を強制できる『国防物資生産法』(DPA)を発動する案まで検討している」と報じた。DPAは朝鮮戦争時代に軍需物資の生産のため整備された法律で、バイデン政権はコロナワクチンの生産を増やそうと自国の製薬各社に同法を適用した。半導体不足によるグローバルな生産空白問題を戦時の状況とみなす、というわけだ。サムスン電子・TSMCの場合、米国国内に半導体工場を持っており、同法の適用を受ける。ブルームバーグは「米国政府は冷戦時代の法律まで引っ張り出している」と伝えた。レモンド長官は「(情報公開を)強制したくはないが、従わないのなら選択の余地はないということを出席各社に伝えた」と語った。
■各社は苦慮
米国政府がこのように強い声を上げるのは、半導体不足問題で米国自動車業界をはじめとする自国産業界の被害が大きくなっている、と判断したからだ。だがサムスンをはじめ、企業情報の提出を要求されたグローバル各社は苦慮している。1級の営業機密に該当する半導体の在庫情報や販売現況が外部に知られた場合、今後顧客企業との価格交渉に支障が出るのはもちろん、競合他社にサムスンのマーケティング戦略が漏れる恐れが高いからだ。半導体業界の関係者は「今後、米国企業がサムスンと半導体の販売契約を結ぶ際に、米国政府がサムスンのチップ販売関連情報を利用して交渉に介入する恐れもある」と語った。
サムスン電子とSKハイニックスは主にスマートフォン・パソコン・サーバー用のメモリーチップを生産しており、自動車用半導体の生産比重は微々たるものだ。だが米国に新たなファウンドリー工場を建てると決めたサムスン電子としては、米国政府の要請を拒絶するのも容易でない状況だ。アン・ギヒョン韓国半導体協会専務は「サムスン電子の場合、自動車用半導体の生産は全体の1%にもならないが、米国にて20兆ウォン(現在のレートで約1兆8700億円)規模のファウンドリー(委託生産)設備投資の決定を控えており、今回の商務省の要請は大きな圧迫になるだろう」と語った。