また北朝鮮は、17年5月に中国・北京で忠北同志会一味の一人と接触し、1カ月後に「B氏など、先般(北京で)会った際に頼んだ人物の資料もできるだけ早く集めて送れ」という指令を下した。B氏は統合進歩党(統進党)忠北道党副委員長を務め、「李石基(イ・ソクキ)釈放運動」を繰り広げていた人物だ。14年6月の地方選挙に統進党の市議会議員候補として清州で出馬し、落選した。
忠北同志会が北朝鮮の指令を実行した状況も、一味が北朝鮮に送った報告文で明らかになった。19年7月に一味は、14年の地方選挙で統進党の市議会議員候補として登録していたC氏の携帯電話の番号と経歴、思想動向を資料にまとめ、北朝鮮側へ渡した。民衆党所属のD氏についての身元情報や思想動向も、指令により19年8月に北朝鮮側へ渡した。取り込み対象となった政治家らについて、北朝鮮は「取り込みは対象事業戦術をうまく打ち立ててこそ成功し得る」「人間的に尽くしてやり、義理を重んじて助けてやり、親しい友人関係を形成することを優先視せよ」など、具体的な工作方法を指示していた。
さらに北朝鮮は、労働団体出身の忠北同志会一味に、忠北地域労働界の関係者取り込みをしつこく指示していた。一味の一人は2017年8月、北朝鮮に送る報告文で、自分の任務を「E氏など民労総(全国民主労働組合総連盟)元幹部らの連携、地域労働運動を会長様(金正恩〈キム・ジョンウン〉)の意図の通り展開するよう影響する」ことと明かした。その後18年2月、北朝鮮は「地域大企業など主要労働現場にアプローチし、傘下党組織を作り出すための基礎を固めろ」「議論するところのある看護師の協力者にアプローチし、看護師党組織をつくり出す準備事業をせよ」などの指令を下達した。
北朝鮮の指令文と忠北同志会の報告文で言及された人物全てについて、実際に取り込みが試みられたかどうかは分かっていない。情報関連機関の関係者は「今後、捜査当局が確認すべき部分で、文在寅政権になって造成された南北融和の局面でこうした対南工作が行われたという点に注目する必要がある」と語った。