中国が脅迫し、報復を警告しても、ベトナムは退かなかった。退けば、中国がさらに強く圧力を加え、要求してくることを知っているからだ。むしろ、強く出た方が中国はベトナムに対してむやみやたらに手を出せない。ベトナムは2014年、南沙群島・西沙群島の葛藤と中国の軍事的脅威に対応するため、米国統合参謀本部議長をベトナムに招待した。米軍制服組トップの統合参謀本部議長がベトナムを訪問したのは、ベトナム戦争中の1971年以来、43年ぶりのことだった。米国の力を借りて中国をけん制したのだ。今回も、ベトナムは米国のサリバン国家安全保障問題担当副大統領補佐官とのインターネット会談を通じ、南シナ海問題に関して米国の支持を引き出した。米国としても、南シナ海で中国をけん制するにはベトナムとの協力が不可欠だ。
韓国も西海問題において、ベトナムのように当初から強く対処しなければ、韓国の内海を中国に少しずつ奪われてしまうかもしれない。外交関係で過激な対応は避けるべきことだが、相手の顔色をうかがうことの方が大きな問題だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権の「恐中症」は深刻なレベルに達している。中国に何も言えず、顔色をうかがうのが常だ。だから終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備時も中国に振り回されて経済報復を受け、韓国の安保主権「三不(三つの不)」政策まで発表した。このような傾向が続けば、西海でも同様のことが起こりかねない。東海(日本名:日本海)では独島(日本名:竹島)付近に日本の巡視船が一度姿を見せても間髪入れず駆け付けて対応する韓国政府が、なぜ中国にはこのように弱い姿勢しか見せられないのか、理解できないという専門家が多い。
そうでなくても中国は習近平体制になってから「戦狼外交」を露骨化している。「オオカミ戦士外交」という意味の戦狼外交は中国の利益を前面に立たせるため、相手に荒々しい言葉や攻撃的な態度で対抗する一種の「ケンカ外交」だ。米国や日本、ベトナムなどに向かって攻勢的外交をする人々には拍手喝采(かっさい)を送る。攻勢的民族主義を通じて、国民の支持と団結を引き出すための習近平式内治の一方便でもある。習近平主席はこれを通じて、自身の3期連続再任を押し通そうという内情が強い。習近平執権期が長くなればなるほど、韓国に対してもこのような戦狼外交が展開される可能性が高くなる。
ペ・ソンギュ論説委員