1980年代に入ると、ブルース・カミングスの著書『朝鮮戦争の起源1:1945年-1947年 解放と南北分断体制の出現』の表紙に載り、韓国でも広く知られるようになった。さらに大きな問題は、うそと判明したこの宣伝用絵画が韓国の教科書に無差別的に載ったことだ。米国による「信川虐殺」というものが完全にうそであることが明らかになると、韓国左派は国際左派勢力と口裏を合わせて「ピカソが表現しようとしたのは特定の戦争ではなく戦争そのものだった」と抗弁する方向へと戦略を変えた。今回の展示でも、こうしたフレームで押していっている。しかしピカソは生涯、共産勢力による戦争を批判したことはない。6・25戦争を起こした北朝鮮・中国・ソ連に対しては徹底した屈従と協力の道を選んでいた人物だ。
スペインに生まれフランスで活動してきたピカソは、1944年にフランス共産党へ入党し、その翌年のインタビューで「私は共産主義者であって、私の絵は共産主義の絵だ」と表明した。「米軍が起こした信川虐殺事件」というのがうそだと明らかになってからも、この絵を巡るごまかしは続いており、ソウルの展示でもこうした努力は必死に行われている。この絵がソウルで展示されるのはよいが、少なくとも、この絵の虚偽性と誤った背景についての正確な知識は明示されるべきだ。残念なことに、そうした最小限の努力も見られない。この絵に関する虚偽の事実について正確に言及することが、観衆に対する最低限の道理だ。
カン・ギュヒョン明知大学教授(現代史)