昨年5月、古紙を集める仕事をしていたC容疑者(79)も、自宅前に置かれていた「プラスチック・パレット」の束を廃棄物処理場で売却。持ち主の通報により警察に捕まった。C容疑者が受け取った金額はわずか2000ウォン(約195円)。防犯カメラを確認した警察は「故意で行ったようには見えない」とし、即決裁判に送付。裁判所も宣告猶予処分を下し、かろうじて前科者処分を免れた。
これらの容疑者のように生計型犯罪に及ぶ人が増えているということは、さまざまな指標からも読み取れる。大法院(日本の最高裁判所に相当)が20日に明らかにしたところによると、軽犯罪により500万ウォン(約49万円)以下の罰金刑を言い渡された容疑者のうち、生活苦を理由に執行猶予判決が下された人の割合は増え続けている。2018年の1.4%から19年は2.8%、昨年(1-10月)には2.9%となった。
生計型犯罪を犯す「コロナ型ジャン・バルジャン」が増加している背景として、コロナの影響で「底辺福祉」がうまく機能していなかったことも挙げられる。昨年3月、京畿道水原市のある考試院(簡易宿所の一つ)で5000ウォン(約490円)相当の焼き卵18個を盗んだとして警察に捕まったイ容疑者(49)は「コロナのせいで建設現場の仕事が途絶えた上、無料給食所も閉鎖されてしまった。10日近く水しか飲んでいなかった」と供述した。コロナ感染に伴う危険から無料給食所が次々と閉鎖され、犯行に及んだという。経済事情が厳しい人々の軽犯罪処罰を軽減する警察の「軽微犯罪審査委員会」も、コロナのためまともに開催されていないという。警察によると、2019年の審査者は6888人だったが、昨年は6217人と10%近く減った。警察の関係者は「昨年は生計型犯罪者が減ったというより、市民団体、弁護士、警察などが全て集まらなければならない審査委員会の特性上、集まりを頻繁に開くことができなかった」とし「今年はもっと頻繁に開くことができるように一線の警察署に呼び掛けている」と説明した。