■「時事性はあるが芸術性は高くない」
この作品は、ピカソが尊敬したフランシスコ・ゴヤの代表作『マドリード、1808年5月3日』の構図をそのまままねたという分析が一般的だ。ナポレオン軍(右側)によるスペイン良民(左側)の処刑場面が描かれた名作だ。だが、『韓国での虐殺』に対する評価は全く違う。ソ・スンジュ氏は「ピカソ特有のキュビズム的な個性が作品の上段にしか現れていないなど、独創性や完結性の面で落ちる作品だ」と言った。共産陣営が「米軍は(北朝鮮の)黄海南道新川で民間人3万人を虐殺した」と主張する「信川虐殺事件」を描いたという話もあるが、北朝鮮が事件を攻勢の目的で世界に知らしめたのは作品完成の翌年からなので説得力に欠けるし、学界でもこの事件は米軍の介入ではなく、地域内の左翼・右翼闘争の結果だという解釈が支配的だ。ピカソの評伝を出した小説家キム・ウォンイル氏(79)は「時事性はあるが芸術性を高く買うのは難しい作品だ」と語り、最高齢の現役画家と言われるキム・ビョンギ氏(105)は「戦争をあまりにも表面的に見ている」とピカソを指弾する文「ピカソとの決別」を書き、1951年に釜山で朗読した。
■「ピカソが描いたのは戦争そのもの」
ピカソ美術館のキュレーター、ヨアン・ポプラル氏は「ピカソが表現しようとしたのは特定の戦争ではなく、戦争そのものだった」と話す。事実、ピカソは「戦争を描く時、ひたすら残酷さだけを考えている」「米国やほかの国の軍帽や軍服のようなものは考えたことがない」と告白している。このため、作品は目的や嗜好(しこう)に合わせて利用されてきた。1956年にはこの作品の複製が作られ、ポーランドやワルシャワで展示されて、ソ連のハンガリー侵攻を批判する役割をした。
『韓国での虐殺』が展示作品110点余りの中で最もホットな作品であることは間違いないが、最も高価な作品は別にある。木の上に紙やクギなどを付けたアッサンブラージュ(Assemblage)技法を使い、1913年に製作した『Guitar and Bottle of Bass』で、保険が1000億ウォン(約97億8000万円)に達する。詩人ギヨーム・アポリネールが「現代彫刻史とは一線を画する傑作」と評した作品だ。大型絵画・陶磁器・彫刻など見どころが多く、展示会場は混雑していた。開幕初日だった1日は入場者数だけで3000人近くに達した。