韓国政府と与党は「金与正(キム・ヨジョン)下命法」という非難にもかかわらず、対北ビラ禁止法を強行成立させた。この法律は「軍事境界線付近から北朝鮮に向けて拡声器放送やビラ散布などを行った場合、最大で3年以下の懲役あるいは3000万ウォン(約290万円)以下の罰金に処することができる」というものだ。これによって韓国国内はもちろん、米国や自由民主主義陣営全体から「韓国は本当に民主主義国なのか」などの批判が相次いだ。米国務省は「北朝鮮への自由な情報流入を増やすことは米国にとって優先順位が高い」とコメントしており、米議会からは「愚かな法律」「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の韓国の動きを懸念」といった指摘も出た。英国や欧州連合(EU)議会、市民団体などからも「対北ビラ禁止法の再検討」を求める声が相次いでいる。
トム・ラントス人権委員会が今年はじめに公聴会の開催を予告したことを受け、青瓦台(韓国大統領府)と韓国政府はこれを阻止するためのタスクフォースを立ち上げるなど対応に全力を挙げてきた。駐米韓国大使館も米議会や米国政府関係者、主要なシンクタンク、人権団体などに対し「南北関係の特殊性」などの論理で説明に力を入れたという。しかし韓国政府などによるこれら一連の努力にもかかわらず、この日公聴会が正式に決まったことを受け、韓国統一部(省に相当)は「(米議会で開催される)公聴会は議決の権限がないなど、韓国における公聴会とは違って政策研究グループのような性格に近い」とコメントした。