北朝鮮の内部事情に詳しい専門家は「北朝鮮によるこのような反応は十分に予想できた」と語る。防疫の力量が劣悪な北朝鮮は、外部からの物資の搬入を通じたコロナの感染拡大を強く懸念してきたからだ。中国との貿易が急速に減少した影響で経済難が深刻になってはいるが、それでも中朝国境は1年にわたり閉鎖されたままだ。韓国政府は今年の初めから北朝鮮に対し、コロナ防疫や水害からの復旧支援の意向を表明してきたが、北朝鮮がこれに応じないのも同じ理由からだ。これに先立ち北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は今年8月の政治局会議で「そのいかなる外部的支援も許容するな」と指示したが、これは今も有効と考えられる。
政界や学界からは李長官の発言について「不適切」との見方が相次いでいる。高麗大学の南成旭(ナム・ソンウク)教授は「南北関係の現実と北朝鮮の状況をしっかりと把握できていない発言だ」と指摘した。保守系野党・国民の力のチャン・ジンヨン党協委員長(ソウル市銅雀甲選挙区選出)はフェイスブックに「コロナ・ワクチン確保の実績を見ると、日本対韓国は3億対0だ。この渦中に北朝鮮の心配ばかりしているようでは、韓国国民については誰が(心配)するのか」と書き込んだ。高麗大学経営学部のイ・ハンサン教授は「歌手・玄哲(ヒョン・チョル)の歌(いつもあなたの考え)の歌詞を思い出す」と指摘し、元京畿道知事の金文珠(キム・ムンス)氏は「李仁栄(全大協=全国大学生代表者協議会)初代議長の同志たちは、北朝鮮の人権など眼中になく、寤寐(ごび)不忘(片時も忘れられないこと)の状態で「確保もできていないワクチン」を上納することしか考えていない」と指摘した。