韓国政府・与党が国家情報院(韓国の情報機関。国情院)の対共捜査権を警察へ移管する作業を推進する中、スパイ捜査権は国情院に残して置く方向で筋道をつけているという話が21日に伝えられた。だが強制捜査権がない調査権だけを国情院に残すというのは、事実上、対共捜査を放棄するも同然という指摘が出ている。国情院が調査権しか持たなくなったら、スパイの容疑者に対する盗聴・金融情報照会など個人情報の収集しかできず、家宅捜索・逮捕・身柄拘束など強制捜査権は警察が行使する。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は21日、第2回「国情院・検察・警察改革戦略会議」にて「国情院は対北・海外専門情報機関として、ひたすら韓国国民と国家の安危にのみ力を集中するよう新たに再編すべき」と発言した。朴智元(パク・チウォン)国情院長は会議後のブリーフィングで「(国情院の)対共捜査権を支障なく移管し、安全保障の空白が生じないよう安保侵害関連業務の体系を再編したい」と語った。これに関連して、与党「共に民主党」の金炳基(キム・ビョンギ)議員は先月4日、国情院の業務から対共捜査権を削除して国内情報収集を制限する国情院法改正案を代表発議した。
警察改編関連では、警察庁傘下の警察捜査コントロールタワーとして新設される国家捜査本部内に安保捜査局が設置される。国情院の対共捜査権移管に備えた措置だ。国家捜査本部長は任期制で、外部の専門家にも開放する。
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行政安全部(省に相当)の陳永(チン・ヨン)長官は21日、文大統領主催の会議後、こうした推進計画を明かして「捜査、生活安全、交通、保安など複数の部署に散らばっている捜査機能を国家捜査本部として統合したい」と語った。また「国家捜査本部長が捜査全般を総括指揮・監督するようにして、警察庁長の個別事件に対する具体的な捜査指揮権を原則的に廃止することで警察捜査の独立性・中立性を確保する方針」と説明した。さらに陳長官は「対共捜査権の移転に備えて、警察の安保捜査の力量も引き上げる計画」とし「国家捜査本部の新設、自治警察制の導入、情報警察改革などを盛り込んだ統合警察法案が定期国会で処理されるよう努力する計画」と表明した。国家警察と自治警察に二元化する自治警察制は、別途組織を新設することなく、広域自治体単位(地方警察庁)の組織をそのまま置いて国と地方が共に協力するように定める方針だ。ただし、警察の組織改編や国家捜査本部の新設などを巡っては「警察権力の肥大化につながる」という懸念が出ている。