石破氏は安倍首相の辞任発表後、共同通信が行った「次期首相にふさわしい人物」を尋ねる世論調査でも34.3%で1位だった。2位の菅氏(14.3%)とは20ポイントの差が出るほど圧倒的だ。石破氏は一貫して「反安倍」路線を維持してきた。日本国民の間では、石破氏が首相となって日本社会を変えてほしいと望む世論が根強いと言えるだろう。しかし派閥間の密室交渉によって自民党総裁が決まり、さらに総裁が首相となる慣例は今回も続くとみられることから、石破氏はまたも涙をのむ可能性が高い。
今年63歳の石破氏は鳥取県出身の2世議員だ。慶応大学卒業後、銀行員として働き、後に、鳥取県知事や自治大臣を歴任した父の死去を受け、故・田中角栄元首相の勧めで29歳で国会議員となった。
11期連続当選中の石破氏は、小泉内閣で旧防衛庁長官として初めて入閣し、福田内閣では防衛大臣となった。外交安全保障分野を得意としており、太平洋戦争のA級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社参拝には否定的だが、戦力保有禁止を定めた憲法改正には安倍首相以上に積極的だ。2012年と18年の自民党総裁選挙で「石破悪夢」に苦しんだ安倍首相が「石破は絶対に総裁になってはならない」との考えを明確にしていることも、石破氏にとっては障害だ。
一方で総裁選挙に出馬の意向を示していた岸田文雄・自民党政調会長は1日、首相官邸で安倍首相に会って支持を求め、またテレビ番組にも出演し政権構想を語ってきた。