この後、朴市長の周辺で緊迫した状況が発生した。9日午後5時17分、朴市長の娘が「父が遺言のようなおかしなことを言って公邸を出て、電話がつながらない」と警察に通報した。当時、ソウル警察庁の捜査チームはAさんの告訴状や事情聴取の内容を基に、捜査の下絵を描いていたところだった。失踪の届出を受けた警察は、直ちに朴市長の行方を追った。9日午後4時ごろに朴市長の携帯電話の位置信号が切れた北岳ゴルフ練習場(ソウル市城北区)付近の北岳山の山麓を中心に、警察官や消防官およそ770人を動員し、捜索犬9頭まで投入して捜索に乗り出した。しかし朴市長は10日午前0時1分、北岳八角亭と三清閣の間の山中で亡くなっているのが発見された。
朴市長の最後の一日は、普段と違っていた。通常は朝早く出勤する朴市長だが、9日は明け方に「体調が良くない」という理由で出勤せず、公邸にとどまっていたという。朴市長はこの日、昼食を首相公邸で丁世均(チョン・セギュン)首相と共にすることになっていた。だが朴市長は9日午前10時ごろ、丁首相に自ら電話をかけ、「とてもつらい。申し訳ない」とキャンセルしたと伝えられている。元秘書のAさんの告訴と朴市長の極端な選択との関連は、まだ確認されていない。しかし前日まで周辺で何らおかしな兆候を発見できなかった朴市長のこうした突然の変化を考慮すると、Aさんの告訴の内容が朴市長にも伝えられたものとみられる。警察の事情聴取を前後して、朴市長がAさんによる告訴の事実を知った可能性がある。朴市長は告訴内容に反論して立ち向かうという対応を選ばなかった。
朴市長が極端な選択をしたことで、警察は「公訴権なし」を理由にこの事件に対するこれ以上の捜査を行わず、検察へ事件を移すこととした。
イ・ドンフィ記者