対北朝鮮政策の最終目標は南北統一だ。憲法第1章第4条に「大韓民国は統一を志向し、自由民主的基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立し、これを推進する」と書かれている。文大統領は2017年7月、ドイツのベルリンで「人為的な統一を追求しない」と宣言した。 「私は憲法を順守し」という言葉で始まる就任宣誓を読んだ2カ月後に憲法無視を公言したのだ。
文大統領は2018年9月1日、平壌・綾羅島競技場での演説で「金正恩(キム・ジョンウン、朝鮮労働党)委員長と北の同胞たちがどのような国を作っていくのか、胸を熱くして見た」と言った。「どれほど民族の和解と平和を渇望しているのか、切実に感じ、確認した」とも言った。北朝鮮が進んでいる方向に共感し、北朝鮮の平和の意志を確認したということだ。北朝鮮がそうなら、何の変化が必要だろうか。文大統領は北朝鮮を今の姿のままで愛している。文大統領が立て直そうとしたのは、北朝鮮を安全保障上の脅威として認識・警戒している大韓民国と米国の「ゆがんだ」見方だった。
文大統領は韓半島の運転席に座っていたが、方向を指示するカーナビゲーション・システムは金正恩の手中にあった。文政権は、政権初期の韓国戦争(朝鮮戦争)終戦宣言採択を国政の中核課題に掲げて総力戦を展開した。北朝鮮が「終戦宣言を一日でも早くすることが信頼回復の第一義的な要素」とサインを送ったからだ。文大統領は米国を説得しようと、「終戦宣言をして問題が発生したら取り消せばいい」という常識外れの話をしたりした。2018年10月、金正恩は「終戦宣言はあまり重要ではない」と言って制裁緩和を要求し始めた。北朝鮮のサインが変わると、文政権もハンドルを回した。文大統領は欧州歴訪で、各国の首脳に会うたびに「制裁緩和で非核化を促進しよう」と呼びかけたが、「実質的な非核化になるまで制裁を順守すべきだ」と面と向かってとがめられた。