対北朝鮮制裁やコロナ事態の長期化により、内外で困難な状況に追い込まれた金正恩氏が、本格的な「血族統治」を始めたことで、金与正氏の対南談話が増えたとの見方もある。金与正氏は今年4月に開催された労働党政治局会議では1年ぶりに政治局候補委員に復帰し、権力ナンバー2の地位を固めたとの評価を受けている。情報機関の元関係者は「首領である金正恩氏の口から非難声明を出すのは権威に負担となるので、金与正氏が悪役を引き受けて兄と役割分担をしているようだ」とコメントした。
今回の談話を根拠に「金与正氏は対南・対米問題を総括している」との見方も説得力をもって語られている。今回の談話に先立ち、金与正氏は今年3月にも自らの名義で談話を発表しており、その中で米国のトランプ大統領からの親書について意見を表明した。自由民主研究院のユ・ドンヨル院長は「金与正氏は金正恩氏の承認を受け、対南事業を直接指導する立場を内外に誇示している」と指摘した。
金与正氏の役割が過去の故・金日成(キム・イルソン)主席の弟の金英柱(キム・ヨンジュ)氏の立場を連想させるとの見方もある。金英注氏は労働党の要職に当たる組織指導部長を務め、1972年の7・4南北共同声明発表の際には金日成主席の代理として署名を行い、複数回にわたり韓国を非難する声明を発表するなど、対南事業にも深く関与していた。
キム・ミョンソン記者