在米韓国人科学者が「世界で初めて患者自身の細胞で作った幹細胞を利用し、パーキンソン病を治療することに成功した」と発表した。専門家の間からは、治療に成功した患者が1人だけなので普遍的な治療法とは認め難いという慎重論と、臨床試験の対象が増えればパーキンソン病治療で道が開けるという楽観的評価が同時に出た。
韓国科学技術院(KAIST)は2日、「米国ハーバード大学メディカルスクールのキム・グァンス教授(66)=写真=が、患者本人の幹細胞を活用する方法でパーキンソン病の患者の臨床治療に成功した」と発表した。キム教授はKAISTで修士・博士号を取り、現在はKAISTの海外招聘(しょうへい)碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)であるとともに総長諮問委員として活動している。キム教授の研究結果は、先月14日に医学分野の国際学術誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に掲載された。
退行型脳疾患であるパーキンソン病は、脳内で神経伝達物質のドーパミンを分泌する神経細胞が減少することにより、筋肉の震え、動きの鈍化、身体の硬直などといった症状が現れる。キム教授の研究陣は、パーキンソン病患者の皮膚細胞をドーパミン神経細胞に変形させ、脳に移植するという方法で臨床治療に成功した。
米国食品医薬品局(FDA)から臨床許可を受け、2度にわたりパーキンソン病患者の脳にドーパミン神経細胞を移植する手術を行った。キム教授は「およそ2年間にわたり患者を観察した結果、免疫システムの拒絶反応はなく、水泳をして自転車に乗るくらいに運動能力が回復した」と語った。
キム教授の研究陣は、パーキンソン病治療に「脱分化幹細胞」の技術を利用した。「成体幹細胞」は特定の細胞に分化するが、「脱分化幹細胞」はさまざまな細胞に分化できる。患者本人の細胞なので免疫問題を心配しなくていいという利点もある。
キム教授は「安全性や効能の立証のため、さらに多くの患者を対象として臨床試験が必要で、FDAでの承認手続きを進めている」としつつ「オーダーメード型の細胞治療がパーキンソン病治療のための普遍的な方法として位置付けられるだろう」と語った。
学界の一部からは慎重論も出ている。幹細胞を研究しているある教授は「幹細胞から分化した細胞が患者の体に入ってがんに変わることもあり得るので、下手に『成功』と断定するのは気を付けるべき側面がある」と指摘した。