【新刊】万国報館編、イ・チャンジュ訳『甲午』(西海文集刊)
「甲午」は1894年を意味する。この年に起きた日清戦争を、中国では「甲午戦争」と呼ぶ。古い新聞を収集・研究している中国の研究チーム「万国報館」が、英・仏・米・ロなど西洋メディアが日清戦争前後に報じたおよそ300の紙面を通して、戦争の状況を振り返った一冊。
日清戦争は、中国が侵略に遭った戦争だった。にもかかわらず、中国に同情する報道を西洋メディアに見いだすのは難しい。日本が世論戦争でも勝利したからだ。戦争中、日本は従軍記者114人を招いた。米国人のメディア専門家を採用し、国家宣伝戦争の総指揮を任せた。西洋の各メディアはおおむね、日本を文明、中国は野蛮とする視点で報道した。メディアを全面活用した日本が実際の戦争と世論戦争、いずれにも勝ったのだ。
同書は、第1章を「東アジアの火薬庫:朝鮮」というタイトルで始める。日清戦争は朝鮮の支配権を巡って繰り広げられた対決にして、戦場の大部分は朝鮮の西海と、平沢・牙山・平壌など朝鮮の地だったからだ。フランスの「イリュストラシオン」(L’illustration)は1894年8月4日付の記事で「朝鮮は導火線というだけでなく、鮮血おびただしく衝突する中心的な地域」と報じた。当の朝鮮は、自らの運命が懸かった戦争だったにもかかわらず、無気力に状況を見守らなければならなかった。
写真とイラストを中心に当時の記事を紹介し、解説を付した。黄海海戦で中国の軍艦「致遠」が沈没する場面、日本軍が朝鮮の仁川に上陸する様子、日本軍が牙山の戦いで勝利し、漢陽近くに建てた凱旋門を通過する場面など、当時の戦争の状況をリアルに見せてくれる。416ページ、2万5000ウォン(約2390円)。