国際機関や人権団体が正面切って韓国を批判する上で、今回の事態を巡る韓国政府のあやしげな行動もその一因となったことだろう。韓国政府は、北朝鮮船を拿捕(だほ)した事実そのものを内密にして、船員の追放手続きが終わってからようやく公開した。しかも、北朝鮮の送還要請すらなかったという。統一部(省に相当)の長官は、北朝鮮の船員らの強制送還を正当化するため、彼らに亡命の意思がなかったかのようにうそまでついた。
韓国政府は今年、北朝鮮人権決議案の共同提案国から外れた。2008年以降昨年まで11年にわたりずっと参加してきた慣例を破った理由については、察しが付く。決議案が、北朝鮮の人権状況について「最も責任ある者」に対する適切な措置を取るよう勧告している部分が引っ掛かったからだろう。北朝鮮の人権状況について最も責任ある者とは、金正恩(キム・ジョンウン)だ。韓国政府は、2016年に制定した北朝鮮人権法で定めている北朝鮮人権財団の設立や北朝鮮人権国際協力大使の任命も、政権発足から2年半が過ぎようというのに実行していない。
これら全ては、今月釜山で開かれるASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議で「金正恩ショー」をもう一度やってみたいという、糸のように細い期待のせいだという。この先、金正恩の戦略に基づいて、いつでもショーは再演できる。その「戦略」とは、韓半島が核の恐怖から解放される道ではなく、その反対で、北朝鮮住民が人間らしく生きることができる道ではなく、その反対だ。