学校の正門に着いたのは、入室完了時間が2分すぎた午前8時12分だった。車両の進入が禁止されている正門は、車1台ほどの幅が開いていた。パク警長は「『後で言えばいいだろう』と考えてとりあえず中に入った」として「正門前で降りて走れ、という訳にもいかないだろうから」と話した。
結局、パトカーの左側のドアが正門の一部にぶつかった。パトカーは停止せずに校庭を横切り、試験会場の前で受験生を降ろした。会場に向かうべきか感謝の気持ちを伝えるべきかとまごまごしていた受験生に対し、パク警長とチャン巡警は「早く行って。試験頑張れよ」と言って励ました。
2人が、初めて会った受験生のために力を尽くした理由は、他人事とは思えなかったからだという。「警察試験に向けて準備していたとき、本当に切羽詰まっていた。その時のことを思い出した。私もそのとき、切迫した気持ちで準備をして受験しに行ったが、受験生がワンワン泣くのでその気持ちが痛いほどよく分かって、後先考えずに車を走らせた」
受験生を降ろして出てきた警察官たち対し、取材陣は拍手を送った。「褒められるようなことではない」と照れ臭そうにしていたパク警長とチャン順警は、見送った受験生が入室して試験を受けているという話を聞くと、ほっとして笑顔を見せた。その上で「落ち着いた状態で試験を受けなければならないのに、あんなに泣いて大丈夫だろうか」と話した。
校門の一部が破損した梨花女子外国語高校側は「破損の程度もひどくなく、公務のために起きたことなので、学校の方で修理する」として、警察には補償を要求しない予定だ。