こうした状況でも、韓国政府に対する中国の「ダブルスタンダードな威圧」は続いている。中国は、2019年国防白書を通して「米国は韓国にTHAADを配備したことで地域の戦略バランスを深刻に破壊してしまい、地域国の戦略および安全の利益を大きく傷つけた」と主張した。
最近5年ぶりに再開された韓中高位軍人級対話では、中国の魏鳳和・国防相が韓国の朴宰民(パク・チェミン)国防次官に「双方の核心にある関心を尊重し、関連するデリケートな問題を適切に処理する流れの上で、両国軍の関係発展と地域安全守護を推進することを望む」と発言した。魏国防相はこれに先立ち、朴次官が出席した北京香山論壇の開幕演説で、韓米を意識して「一部の国が排他的安保戦略を駆使してミサイルを配備するのは、地域安保に対する不確実性を大きくするだけ」と主張した。
韓国政府は、露骨に韓米同盟を揺さぶる中国の態度を傍観している。米国では、そんな韓国に対する不満が積み重なっているという。米国は今年4月、平沢基地(キャンプ・ハンフリーズ)でTHAADの展開訓練を行ったが、これに関して韓国軍内外からは「米国がTHAADの追加配備を望んでいるのではないか」という声が上がった。米国の専門家らは最近相次いで、韓国がMDに参加すべきだという主張を提起している。
韓国軍内外では、「韓国だけが損をする」3不の立場を廃棄すべきだという声が力を得ている。シン・ウォンシク元合同参謀本部次長は「3不の立場を維持するのは軍事主権放棄レベルのもので、廃棄すべき」だとして「中国の脅威だけでなく、韓国がまさに当面している北朝鮮の核やミサイルにも無防備な状態に置かれている」と語った。朴元坤(パク・ウォンゴン)韓東大学教授は「戦時作戦統制権を(韓国軍に)移管したら偵察・監視能力が不足することを韓国政府ははっきり理解しているので、MDと連携しないわけにはいかない」としつつ「こういう形で少しでもMDと連携したら、また中国に文句をつける口実を与えてしまう」と語った。