豊渓里出身の脱北者の体内から命に関わる被ばく量検出

 この地域出身の脱北者の間からは、数年前から核実験場周辺の村で奇形児が生まれたり、原因不明の「鬼神病」にかかったりするという証言が多数出ている。情報機関の元関係者は「万塔山を水源とする長興川、南大川が吉州郡・花台郡を経て東海まで流れている」として「海流に乗って韓国に影響を及ぼす可能性を綿密に調査すべき」と語った。

 韓国側最北端の高城から300キロ、ソウルから450キロ離れている豊渓里の放射能汚染の可能性は、このように韓国国民の生命・安全と直結した問題であるにもかかわらず、統一部は検査結果を発表しなかった。統一部は、国会提出資料でも詳細な内訳は非公開処理したといわれている。これについて統一部の当局者は「17年の研究の結論は、放射能被ばくと(核実験は)因果関係はないというもの」だとして「(昨年)追加検査で出てきた内容は前年と同じなので、特に発表していないと思う」と語った。

 これは、日本と過去史・経済対立を繰り広げている韓国政府が、11年に原発事故が起きた福島県地方の放射能汚染問題を繰り返し提起する態度とは全く違う。

 朱漢奎(チュ・ハンギュ)ソウル大学原子核工学科教授は「福島地方の場合、平均の放射線数値は1ミリシーベルト程度で、放射能の事故が起きたときの現場の作業員も(被ばく線量は)100ミリシーベルト以下だった」「豊渓里出身の脱北者の検査結果は日本人の数百倍に達する大変なレベルで、放射能にさらされたのでないなら出てくるはずがない数値」と説明した。野党関係者は「こんな深刻な結果を、韓国政府があえて過小評価しているかのような印象を拭い難い」として「北朝鮮をかばっているのではないか」と語った。

 鄭柄国議員のオフィスによると、検査対象になった脱北民の相当数は頭痛、視力低下、嗅覚・味覚の鈍化、心臓の痛み、白血球の減少、骨・関節の痛みなど原因の分からない疾患に悩まされている。だが韓国政府は、こうした人々への後続の案内を十分に行っていないという。

キム・ミョンソン記者
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