【コラム】文在寅大統領が語る「美しい復讐」の矛盾

 閣僚候補者7人の人事聴聞会があった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領もテレビで見守ったという。不動産投機、偽装転入、さまざまな「ぜいたく」「優遇」の疑惑が相次ぐ様子を見て何を思ったのか知りたいと思った。大統領の意中を知るであろう与党幹部に尋ねた。その幹部はすぐに「社会の指導層という人間はなぜ皆がこうなのか」と語った。これまで主流社会に属していた閣僚候補者の道徳性は期待以下だというのだ。同幹部は金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道知事が収監された際には「主流の力はまだ強い」と話していた。

 「主流」と「非主流」の存在を前提としよう。韓国社会では主流は批判の対象であり、非主流は憐憫(れんびん)の対象だ。現政権関係者は今も自分たちを「非主流」だと考えている。

 文大統領も大統領選の当時、「大韓民国の主流を交代させたい」と発言した。ある側近が「どんな国をつくりたいか」と尋ねたのに対してそう答えたのだという。文大統領の脳裏には大韓民国の主流と非主流が明確に区分されており、自身も非主流に属すると考えていたのだ。

 文大統領はまた、「美しい復讐(ふくしゅう)」にも触れた。大統領府(青瓦台)の楊正哲(ヤン・ジョンチョル)元秘書官は「盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の遺書を財布に入れて歩く文大統領にどうするのかを尋ねると、『復讐』という言葉を使った。ところが文大統領がその復讐は通常の『誰かに対する恨みを晴らす』のではなく、『我々が彼らとは違うということを示すことだ』と話していた」と振り返った。

 文大統領は朴槿恵(パク・クンヘ)政権下で文化人の「ブラックリスト」事件が浮上した際にもツイッターで同様の発言を行った。文大統領は「大韓民国に再びそのようなことがないようにする。最も美しい復讐とは、我々が彼らとは異なることを示すことだ」と述べた。ここで言う「彼ら」は「主流」であり、「我々」は「非主流」だ。現政権の「積弊清算」「自分が正しく他人は誤り」という路線の根はそこにある。

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