なぜ東レは韓国に投資を続けているのか

 韓国の技術者の優れた能力も東レが韓国工場を建て続ける理由だ。東レは2010年代半ばにアジアにPPS工場を建てることを決め、韓国、中国、インドネシアを候補として検討した。その結果、韓国の群山への建設を決めた。熱に敏感なPPSは生産工程の管理が重要で、韓国工場が30年以上にわたり、工程管理面で最高の実績を収めてきたからだ。東レ先端素材のイ・ヒョソプ群山工場長は「今は韓国工場が独自に開発した工程技術を日本に伝授するほどだ」と話した。韓国に良質な水素などPPS原料を供給できる中小企業がある点も韓国を選んだ重要な理由だった。

 しかし、韓国の投資環境は良いことばかりではない。業界関係者は「化学メーカーは電力消費量が大きいため、東レが韓国に投資する際には、日本より安い産業用電気料金が重要な検討要素だったはずだ。今後産業用電器料金は値上げが見込まれ、少なからず負担となる可能性がある」と指摘した。さらに、急激に上昇する人件費の問題もますます深刻になっている。別の業界関係者は「化学業界の場合、韓国の大卒者の初任給が日本を既に追い抜いている。人件費が現在のペースで上昇すれば、企業は対応に苦慮することになる」と述べた。

■2次電池素材などに投資拡大

 韓国東レはより攻撃的に韓国への投資を進める計画だ。東レは今年7月、亀尾に2次電池分離膜生産ラインを完成させた。20年までに3500億ウォンを投資し、生産量を現在より50%増強する。ここで生産した製品はLG化学、サムスンSDIなどに供給される。東レ先端素材は「スパンボンド不織布」事業にも20年までに1150億ウォンを投資する。スパンボンド不織布はおむつ、生理用品、医療用マスク・ガウンなどに使用される素材で、東レ先端素材がアジア首位だ。

 韓国東レはまた、昨年11月にソウル市江西区の麻谷地区で研究開発センターの起工式を行った。来年末に完成すれば、研究開発部門だけでなく、韓国東レの主な系列企業が入居する予定だ。同社のキム・ウンジュ常務は「投資が計画通りに進めば、東レの韓国国内での売上高が昨年の3兆1000億ウォンから20年には5兆ウォンに達する」と予想した。

群山=李性勲(イ・ソンフン)記者
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