1949年8月16日、仁川沖合で大韓民国における最初の観艦式が行われた。韓国政府樹立1周年を記念する行事でもあったが、実態は哨戒艇9隻だけのみすぼらしいものだった。孫元一(ソン・ウォンイル)海軍参謀総長(当時)が李承晩(イ・スンマン)大統領を案内して旗艦に乗り込むと機動訓練が始まった。艦艇が一列に並んで行われた37ミリ艦砲射撃の際には拍手が起こったという。
観艦式はその国の国家元首が自国海軍の戦闘態勢をチェックする海上査閲式だ。1346年に当時の英国王エドワード3世がテムズ川の河口でフランスと戦う艦隊を査閲したのが始まりとされている。大英帝国の絶頂期だった19世紀、観艦式は国力を誇示する手段でもあった。最近は複数の国が海外の艦艇を招き、軍事交流や協力を誓い合うきっかけとしても位置づけられている。
2005年に英国南部のポーツマス港でトラファルガー海戦戦勝200周年を祝う観艦式が行われ、32カ国から168隻の艦艇が参加した。エリザベス2世主催で行われたこの観艦式は今世紀最大規模だった。09年には中国も海軍創設60周年の観艦式を山東省青島で行い、最新鋭の艦艇や原子力潜水艦が姿を現した。この観艦式には韓国からも揚陸艦「独島」と駆逐艦「姜邯賛(カン・ガムチャン)」が参加した。昨年4月に中国の習近平・国家主席は南シナ海でこれまでにない大規模観艦式を行い「周皇帝の海上戴冠式」と呼ばれた。海軍の伝統が深い日本では観艦式の人気が非常に高く、入場券はプレミアが付いて取引されるという。
昨日済州海軍基地沖合で文在寅(ムン・ジェイン)大統領や韓国軍首脳が見守る中、国内外から39隻の艦船が参加し国際観艦式が執り行われた。海外からは12カ国19隻が参加した。今や韓国海軍も世界的なレベルに近づきつつある。しかし米第7艦隊の空母「ロナルド・レーガン」は観艦式が終わってから済州基地に入港した。北朝鮮で核・ミサイルを巡る動きが表面化するたびに韓半島(朝鮮半島)周辺に展開する空母だ。韓国軍関係者は「最初からその計画だった」と説明しているが、海上で観艦式に反対する団体の抗議行動が原因だったようでもあり非常に気まずかった。韓国国内には済州海軍基地を「米国の侵略基地」などとして反対する勢力が今も存在する。しかしこの基地がなければ韓国の南海上を守ることはできない。済州海軍基地の建設は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が決めたことだが、与党・共に民主党は野党だった時期にこの反対運動の先頭に立った。
一方「旭日旗」掲揚問題で日本の自衛隊からは艦艇が参加せず、中国もふに落ちない理由で直前になって不参加を伝えてきた。結果的に今回の済州観艦式では韓国国内での対立、そして北東アジア3国の今なお解決しない葛藤などさまざまな問題が改めて浮き彫りになった。